成虫のみに強い致死作用を示すイネのセジロウンカ抵抗性
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要約
やや弱~中程度の抵抗性を示すセジロウンカ抵抗性遺伝子を持つイネ系統上では、セジロウンカの発育齢により抵抗性発現程度が異なり、成虫羽化までは致死作用は働かず発育遅延、体サイズ小型化、長翅率増加がみられるが、成虫期には吸汁阻害による致死作用が強く働く。
- キーワード:セジロウンカ、抵抗性、移動分散
- 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
- 連絡先:電話096-242-7731、電子メールmmasa@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・病害虫、共通基盤・病害虫(虫害)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
セジロウンカに対する抵抗性遺伝子を持つイネは、やや弱~中程度の抵抗性を示す。これまで、抵抗性の評価は主に幼苗検定や幼虫を用いた抗生作用検定で行われている。しかし、致死作用以外のいわゆるマイルドな抵抗性や発育齢により発現性の異なる抵抗性の評価はほとんど行われていない。これらの抵抗性は、致死作用のような強い抵抗性と異なり抵抗性崩壊を遅らせる効果があると考えられ、その重要性を再評価する必要がある。そこで、抵抗性遺伝子を持つIRRI育種イネ4系統(以下、抵抗性品種)に対する抵抗性程度を、セジロウンカの発育齢別に、幼虫期生存率以外の諸形質について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 抵抗性品種上では、幼虫期生存率は感受性品種(TN1)上と同等に高く致死作用はみられないものの(データ略)、幼虫発育が遅延し(図1)、羽化成虫が小型化し(データ略)、長翅雌率が増加する(図2)。
- 抵抗性品種上では、雌成虫の生存率は25%程度と極端に低く、成虫期にのみ致死的作用が強く働く(図3)。成虫の吸汁量はいずれの抵抗性品種上でも感受性品種上に比べて低い(データ略)。
- 抵抗性品種上では、どの発育齢でも感受性品種上に比べ吸汁量が少なく吸汁阻害が見られる。両品種での吸汁量比率(抵抗性/感受性)は、成虫では幼虫に比べて低い(図4)。
- 以上の結果から、抵抗性品種上では、成虫羽化までは吸汁阻害の程度が弱く長翅率増加により移動分散を促進させる反応がみられるが、成虫期には強い吸汁阻害により致死作用が認められる。
成果の活用面・留意点
- イネの抵抗性遺伝子解析のための抵抗性検定などにおいて、成虫を用いて検定することにより、これまで不可能であった弱~中程度の抵抗性の判定が可能になる。
- ウンカの吸汁阻害抵抗性機構解明のための基礎的知見となる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:移動性イネウンカ類の個体群増殖機構の解明
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2002~2005年度
- 研究担当者:松村正哉、菅野紘男