畜産集中地帯における地域内窒素フロー

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要約

熊本県旭志村において農業部門に流入する窒素の量は年間3059tで、流出する窒素は1317tであった。飼料の改善等各種技術を導入することにより217tの収支改善を行えることが推定される。

  • キーワード:畜産、窒素循環、環境負荷物質、養分フロー
  • 担当:九州沖縄農研・環境資源研究部・上席研究官・土壌資源利用研究室
  • 連絡先:電話096-242-1150、電子メールarakawa.yusuke@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・総合研究
  • 分類:・参考

背景・ねらい

九州の畜産地帯では家畜ふん尿が過剰に産出され、地域の環境に富栄養化などの影響を及ぼしていると考えられる。本研究では畜産の盛んな熊本県旭志村を調査地とし、家畜ふん尿の生産量並びに堆肥の出荷量や肥料の販売量および作物による窒素吸収量等から地域における窒素フローを推定し、窒素収支について評価を行う。さらに本地域総合課題で得られた飼料の改善等の各種技術導入による窒素収支改善効果について試算する。

成果の内容・特徴

  • 平成11年度の旭志村の窒素収支を推定した所、流入が3059tに対して流出が1317tと大幅な流入量超過となっている(図1)。
  • 耕種部門(飼料畑を除く)への肥料由来の窒素のインプットは27tで、熊本県の施肥基準から推定される窒素必要量(87t)の33%であり、すでに化学肥料から家畜ふん堆肥への代替が大幅に進んでいることが伺える(図1)。
  • 搾乳牛において現行のルーメン分解性タンパク質の割合の多い飼料からルーメン非分解性タンパク質の割合の多い飼料に変更することにより飼料からの窒素流入減で33tの窒素収支改善が図れるものと推定される(表1)。
  • 大豆・小麦作の作付面積を各々35ha(現行の5倍)に拡大した場合、農産物の搬出増により8tの窒素収支改善が図れるものと推定される(表1)。
  • 3,4に加えて豚の飼料改善、スラリー圃場還元に伴うアンモニア揮散の削減技術の導入等を実行した場合流入が年間2885tに対して流出が1360tとなり、合わせて217t(肥育牛約4100頭分の年間窒素排泄量に相当)の窒素収支改善が図れるものと推定される(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 窒素フローは農林水産統計などの各種統計資料、各種調査データおよび関連する研究成果をもとに見積もった。主要な資料は以下のとおり。家畜飼養頭数データ(旭志村農政課資料)、肥料入荷量,堆肥出荷量(農協、酪連の販売データ)、家畜ふん尿排出量原単位(築城・原田1997)、作物出荷量(作物統計)、作物の窒素含量(標準食品成分表、標準飼料分析表)
  • 堆肥施設建設等各種事業を行う際の窒素収支改善効果算定の基礎となる。

具体的データ

図1 平成11年度における農業部門における窒素収支の推定

 

表1 各種導入技術に基づく窒素収支改善量の推定

その他

  • 研究課題名:地域内における窒素、リン酸及びカリウム収支に基づく物質循環型生産システムの開発
  • 予算区分:交付金プロ(新規形質作物)
  • 研究期間:1998~2002年度