高濃度塩化カリウム水溶液中硝酸態窒素の簡便比色定量法
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要約
土壌抽出等に用いられる高濃度の塩化カリウム水溶液でも、蒸発乾固による析出塩をサリチル酸濃硫酸添加後に加熱溶解すれば、硝酸態窒素が比色定量できる。
- キーワード:硝酸態窒素、塩化カリウム、加熱溶解、サリチル酸、定量法、土壌
- 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・水田土壌管理研究室
- 連絡先:電話0942-52-0681、電子メールyshara@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
土壌中のアンモニウム態窒素と硝酸態窒素は塩化カリウム水溶液による同じ抽出液を用いて定量が可能であるが、塩化カリウム抽出液における硝酸態窒素の定量は、溶液の高い塩濃度のために連続流れ方式分析装置などの特殊な機器が必要で、手分析では方法が限られる。主に水中の硝酸態窒素の定量法として用いられるサリチル酸を用いた比色法(Cataldo法)は簡便であるが、土壌抽出等に用いられる2M塩化カリウム水溶液のように塩濃度が高い場合は十分な線形関係を得られないことが報告されている(Yang et al., 1998)。そこで、高濃度の塩化カリウム水溶液でのCataldo法の適用を検討する。
成果の内容・特徴
- 乾固後の析出塩にサリチル酸濃硫酸溶液を浸すだけでなく、析出塩をサリチル酸濃硫酸溶液で完全に溶解すれば、塩濃度が高い2M塩化カリウム水溶液でも吸光度と硝酸態窒素濃度に直線関係が得られる(図1)。析出塩は100℃程度でサリチル酸濃硫酸溶液と接触させれば発泡して溶けるので、溶液添加直後の反応熱で熱い間に攪拌し、さらに試験管壁面等に残った析出塩を溶かすために、乾熱器等で再度加熱し攪拌する。
- 再度加熱する際、70℃程度では硫酸溶液の粘性と反応性が低く溶解に時間がかかり、試験管壁面への溶液の残留等から再現性が低下する。逆に150℃以上では長時間放置すると吸光度の低下が見られる。このため、100℃程度で行うのが良い(図2)。
- 溶液の塩濃度が高い場合は中和反応が緩慢になるので、サリチル酸濃硫酸溶液0.4mlに対し2M NaOHを用いれば、事前に水添加が無くても安全に中和できる。また、発熱も小さいので、水冷等の操作無しにしばらく室内に放置するだけで分析できる。
- 以上から、採取誤差を少なくするため採取液量を0.5mLとし、試験管で撹拌できるように最終液量を10mL程度とした図3の方法が良いと考えられ、この方法で2M塩化カリウム水溶液中の0.5-60ppm程度の硝酸態窒素量が分析できる。
成果の活用面・留意点
- 試料液自体に着色がある場合は、サリチル酸濃硫酸溶液の代わりに濃硫酸を用いて得られた溶液の吸光度を測定し、着色に起因する分として差し引けば定量できる。
- 塩化カリウム濃度が高いほど吸光度が低下するので、定量では塩濃度を一定にする。また、強酸性や強アルカリ性(pH<3, 12<pH)では試料の発色が弱くなる。
- 塩化カリウム濃度が1Mや10%(1.3M)の場合も、2Mと同様に利用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:代かき同時土中点播栽培における省力施肥管理技術の開発
- 予算区分:21世紀プロ7系
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:原嘉隆、土屋一成、草佳那子