小麦茎葉のダイオキシン類の大部分は葉身と葉鞘の表面に存在する

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要約

過去のCNP、PCP等の水田除草剤の使用により土壌および小麦の葉身と葉鞘のダイオキシン類濃度は上昇するが、葉鞘で覆われた茎の濃度上昇は少ない。葉身と葉鞘のダイオキシン類濃度は葉鞘で覆われた茎よりも高く、茎葉全体の濃度に占める割合も高い。

  • キーワード:CNP、PCP、小麦、水田除草剤、ダイオキシン類、土壌
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・水田土壌管理研究室
  • 連絡先:電話0942-52-0681、電子メールkusakana@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

安全な食糧を生産するために、ダイオキシン類の農地での動態および作物への移行過程を解明することが求められている。そこで、過去にCNP、PCP等の水田除草剤が使用された稲麦二毛作圃場と水田除草剤が使用されなかった麦単作圃場の土壌とそこで栽培された小麦のダイオキシン類濃度を比較し、CNP、PCP等の水田除草剤散布が土壌のダイオキシン類濃度に与えた影響および小麦へのダイオキシン類の移行過程を明らかにするための手がかりを得る。

成果の内容・特徴

  • 過去にPCP、CNP等の水田除草剤が使用された圃場の土壌のダイオキシン類濃度はこれらの除草剤を使用しなかった圃場の土壌の濃度よりも明らかに高い(図1)。九州沖縄農研内(筑後市)の両圃場の大気由来の降下物の条件は同様であり、PCP、CNP等の水田除草剤使用は土壌のダイオキシン類濃度が上昇した主な原因である。
  • 小麦茎葉のうち葉身、葉鞘および露出している茎のダイオキシン類濃度(露出部)は土壌濃度の高低を反映しているが、葉鞘で覆われた茎の濃度に対する土壌濃度の影響は少ない。葉鞘で覆われた茎のダイオキシン類濃度よりも露出部の濃度は4~10倍程度高く(図2)、茎葉全体のダイオキシン類濃度に占める露出部の濃度の割合は60~90%と高い。
  • 超音波洗浄や拭き取り処理で小麦茎葉の表面に付着している土壌粒子を除去することにより小麦茎葉のダイオキシン類濃度は一部低下するが、これらの処理では完全にダイオキシン類を除去できない(図3)。
  • 以上より、小麦茎葉表面には土壌粒子の付着や土壌からの揮発に由来するダイオキシン類が含まれ、その大部分は超音波洗浄や拭き取りでは除去できない状態で存在すると推察される。

成果の活用面・留意点

  • 過去のCNP、PCP等の水田除草剤の使用が土壌のダイオキシン類濃度に与えた影響および作物へのダイオキシン類の移行過程を明らかにする際の基礎資料となる。
  • 土壌は細粒灰色低地土である。
  • 土壌および小麦茎葉のダイオキシン類濃度は風乾重当りの値である。
  • PCPは1960~1970年頃に使用され、塩素数の多いPCDD/DFとCo-PCBを不純物として含み、CNPは1960年代末~1980年代中頃に使用され、塩素数の少ないPCDD/DFを不純物として含む水田除草剤である。

具体的データ

図1 過去のCNP、PCP等の水田除草剤の使用履 歴が異なる麦跡土壌のダイオキシン類濃度の比較

図2 過去のCNP、PCP等の水田除草剤の使用履歴が異なる圃場 における小麦のダイオキシン類濃度の比較

 

図3 小麦茎葉濃度の処理間の比較

その他

  • 研究課題名:稲・麦二毛作が内分泌かく乱物質の動態に及ぼす影響と作物への吸収・蓄積過程の解明
  • 予算区分:環境ホルモン
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:草佳那子、土屋一成、森泉美穂子、原嘉隆、西田瑞彦