日長反応を考慮した秋播きコムギの出穂期予測モデル
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要約
DVR法を用いて気温と日長の推移からコムギの出穂期を予測するモデルを構築した。このモデルにより、秋播性程度I~IVのコムギ品種の出穂日が3~5日の標準誤差で予測できる。
- キーワード:コムギ、DVR、出穂期
- 担当:九州沖縄農研・環境資源研究部・気象特性研究室
- 連絡先:電話096-242-7766、電子メールmaruyama@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・生産環境(農業気象)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
作物の出穂期や成熟期を予測することは、その作物の適地判定あるいは適正な栽培管理のために重要である。環境要因の推移から作物の生育を予測する方法のひとつにDVR(発育速度)法があり、これまでにイネ、トウモロコシ、ダイズなど多くの作物について発育ステージの予測方法が提案されている。しかし、秋播きコムギについては、多くの夏作物と異なる長日植物であることから、日長反応の違いのためにその発育ステージの予測は困難であった。そこで、長日植物の日長反応を考慮したDVRモデルを構築し、秋播きコムギの出穂日の予測に適用した。
成果の内容・特徴
- 日平均気温と日長を入力変数としてコムギの播種日から出穂日までの日数を予測するモデルを構築した。本モデルは、短日植物であるイネのDVR推定式における日長反応の部分を、日長が長くなるほどDVRが大きくなるよう改良している。(図1)
- 秋播性程度の異なる品種:イワイノダイチ(秋播性程度IV)、西海179号(同III~IV)、チクゴイズミ(同I~II)に対して決定されたモデルのパラメータ値は表1の通りである。これらのパラメータ値を用いて3~5日の標準誤差で出穂日を予測できることが期待される(表1、図2)
- 「福岡」「飯塚」「佐賀」地方気象台(または測候所)における平年の気温データを用いてモデルから予測された各地域の平年の出穂日は、10月25日~12月5日の播種日に対して3月22日~4月20日の範囲である。地域別に比較すると南の地域ほど出穂日が早く、また品種別に比較すると秋播性の強い品種ほど播種日の変化に対する出穂日の変化が小さい。(表2)
成果の活用面・留意点
- ある地域での特定の播種日に対する出穂日の目安を得ることができるため、栽培・防除計画を立てる上での参考となる。
- 各品種のパラメータ値は、福岡県と佐賀県における作期試験データを用いて決定しているため、これ以外の地域への適用にあたっては注意が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:小麦赤かび病の早期防除予測モデルの開発
- 予算区分:「21世紀I系」
- 研究期間:2001~2004年度
- 研究担当者:丸山篤志、黒瀬義孝、大場和彦
- 発表論文等:丸山ら(2002)丸州農業研究64:15