暖地水田作経営において早生大豆導入が輪作体系に与える影響

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要約

暖地水田作経営において,5日間収穫時期が早まる大豆新品種の導入は,小麦および大豆の作付可能面積の増大,大麦の不適期播種の減少などにより,作付可能上限規模において,過去6年間の気象条件のもと年平均約150万円の所得増大をもたらす。

  • キーワード:早生大豆,輪作体系,所得増大,暖地水田
  • 担当:九州沖縄農研・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:電話096-242-7695、電子メールsasa@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・農業経営,共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

早生大粒の特性を持つ大豆新品種サチユタカは,北部九州の水田地帯におけるフクユタカの後継品種として期待を集め,暖地水田作経営における導入効果が注目されている。しかし,現時点では収量,価格等のデータは不十分である。
そこで半旬~2週間収穫時期が前進するという特性のみ着目し,過去6年の気象変動による大豆収穫時期の変動と降雨による作業阻害を考慮した数理計画法による営農モデルを用い,早生大豆の導入効果を経営的に評価する。

成果の内容・特徴

水稲麦大豆を作付けする営農モデルの播種,収穫時期を表1の 通り設定している。大豆はフクユタカと早生大豆を同時期に播種し,早生大豆は収穫時期が半旬早まり,年ごとに変動する。小麦は11月第3半旬~11月第6 半旬まで播種可能,大麦は11月第3半旬~12月第3半旬まで播種可能だが,不適期である12月播種は単収が低下すると仮定している(表1)。転作率は40%。シミュレーションの結果から,以下の新品種導入効果を指摘できる。

  • 20ha規模において,早生大豆導入は6年のうち5年小麦の作付面積を増加させ,大麦の不適期播種を行う面積を減少させる(図1)。
  • 20ha規模において,天候不順年(97年播種)においては11月末の降雨が影響し,早生大豆の導入により大麦の不適期播種を減らすことができない。ただし,早生大豆導入は大豆作付面積の拡大をもたらし,わずかに麦の作付面積を増加させる(図1)など,リスク軽減効果がある。
  • 作付可能上限規模となる経営面積は,生産調整面積をすべて大豆でまかなう場合,フクユタカのみならば24.7haである一方,早生大豆導入により26.2haへ拡大する。麦類と大豆をあわせた作付面積は年平均2.9ha拡大する(表2)。
  • 作付可能上限規模において,早生大豆導入により,フクユタカのみの場合に比べ水稲・麦・大豆全体の所得は年平均150万円近く上昇する(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 大豆新品種の導入を検討する際の参考として活用できる。
  • 早生大豆導入効果の特徴が明らかになるため,輪作体系における今後の技術開発課題を検討する上での参考となる。
  • 営農モデルでは早生大豆新品種とフクユタカの品質,収量,価格は等しいと仮定している。

具体的データ

表1 モデルにおける作目毎の設定

 

図1 20ha規模における,早生大豆品種導入による大豆+麦類作付面積の変化

 

表2 生産調整を全て大豆でまかなう場合における作付可能上限規模と所得

その他

  • 研究課題名:開発技術の経営的評価と営農モデルの策定
  • 予算区分:21世紀プロ7系
  • 研究期間:1997~2003年度