近赤外分光分析法によるゴマ種子の油分含量・脂肪酸組成比の非破壊測定

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要約

ゴマ種子数gを測定用カップに入れ、ガラスカバーをして表面を揃え、近赤外分光析器にて測定すると、ゴマ種子の油分含量・脂肪酸組成比が、簡易・迅速かつ非破壊的に測定できる。

  • キーワード:近赤外分光分析法、ゴマ種子、脂肪酸組成比、油分、非破壊測定
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・上席研究官
  • 連絡先:電話096-242-1150、電子メールsato@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・流通加工、畑作、作物・夏畑作物、食品
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ゴマの育種あるいは搾油の現場においては、油分含量・脂肪酸組成の速やかな分析が望まれている。しかしながら、従来の湿式化学分析では多くの手間と時間を要する。このため、近赤外分光分析法によるゴマ種子の油分含量・脂肪酸組成の非破壊迅速測定法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 全粒ゴマ種子約3gを測定用カップのくぼみに満たし、ガラスカバーをして表面を揃えて、近赤外分光析器にて測定する。
  • 得られたスペクトル値と別に求めた化学分析値とを用いて、解析によりキャリブレーション式を導く。これらを用いると、ゴマ種子の油分含量・脂肪酸組成比(パルミチン酸組成比を除く)が、簡易・迅速かつ非破壊的に測定できる(図1)。種皮色が白、黄褐色、茶褐色、黒色のゴマ種子に対し、予測の際の誤差(SEP)は、油分:1.431%、パルミチン酸組成比:0.616%、ステアリン酸組成比:0.348%、オレイン酸組成比:1.051%、リノール酸組成比:0.826%である。
  • キャリブレーション式を用いないで、近赤外スペクトル・パタ-ンからリノール酸組成比を測定することもできる。近赤外2次微分スペクトルの1600nmの値を0、1724nm付近の極小値を-1となるように換算すると、スペクトルの特徴が明確となる。リノール酸が多い場合、1708nm付近でスペクトルの強度が下向きに強くなる(図2の実線)。ただし、黒ゴマ種子の場合、通常と違うパターンを示す(図2の破線)。
  • 近赤外2次微分スペクトルの1708nmの読みとリノール酸組成比との相関図(図3の白丸)から示されるように、大まかな測定が可能である。黒ゴマ種子(図3の黒丸)を除いて、相関係数が-0.786となり、一波長の使用でも、許容できる精度で測定可能である。

成果の活用面・留意点

  • 水分含量(r=0.958,SEP=0.318%)・タンパク質含量(r=0.916,SEP=0.830乾物重%)等他の成分も測定可能である。
  • 黒ゴマ種子の近赤外スペクトル・パタ-ンについては、さらに検討を要する。
  • リノール酸組成比については、原粒の単粒子実の場合でも、小さい種子用の一粒カップを用いて、近赤外スペクトルを計測すれば、複数粒と同様のスペクトルの挙動となる。単粒の場合の近赤外2次微分スペクトルの1708nmの読みとリノール酸組成比との相関係数は-0.830となり、簡便に非破壊的に把握できるので、これを選抜指標に用いると育種効率が向上する。

具体的データ

図1.近赤外分光分析法による成分推定値と対照分析法による成分分析値との散布図(ゴマの油分含量・脂肪酸組成)、試料:ミャンマーの遺伝資源および作物研(つくば)で栽培したもの。

 

図2.ゴマ種子の近赤外2次微分スペクトル 図3.ゴマ複数粒:リノール酸組成比と1708nmの読みとの相関

 

その他

  • 研究課題名:雑穀類における成分特性の評価と簡易検定法の開発
  • 予算区分:21世紀プロ4系(普通畑作物・資源作物)
  • 研究期間:2002~2002年度
  • 研究担当者:佐藤哲生、Aye Aye Maw(ミャンマー中央農研)、勝田(石)真澄(作物研)
  • 発表論文等:1)Sato (2002) Biosci.Biotechnol.Biochem. 66:2453-2458