天敵と熱水土壌消毒を核とした秋冬作メロンの総合的病害虫管理体系

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要約

秋冬作の施設栽培メロンにおいて、コレマンアブラバチ、タイリクヒメハナカメムシ等の天敵類や熱水土壌消毒と選択的農薬を組み合わせることにより、ワタア ブラムシ、アザミウマ類、黒点根腐病、うどんこ病等の主要病害虫の実用的に問題のない防除が可能であり、慣行防除体系の合成農薬散布回数を半減できる。

  • キーワード:メロン、主要病害虫、天敵、熱水土壌消毒、総合的病害虫管理
  • 担当:九州沖縄農研・野菜花き研究部・上席研究官、野菜茶研・果菜研究部・病害研究室、九州沖縄農研・野菜花き研究部・野菜花き保護研究チーム、熊本農研セ・生産環境研究所・病害虫研究室
  • 連絡先:電話0942-43-8271、電子メールkashio@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫、野菜茶業・野菜生産環境
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

施設栽培メロンでは、黒点根腐病、土壌伝染性ウイルス、うどんこ病、ワタアブラムシ等の多種の病害虫が発生し、その対策のため合成農薬が多用されてきた。 しかし、近年は、消費者のより安全・安心な農産物に対する要求、生態系への負荷低減、2005年以降の臭化メチル全廃等の問題に対処するため、合成農薬を 大幅に削減した環境にやさしい防除技術の開発とその普及が急務となっている。このため、天敵類、熱水土壌消毒等を基幹技術とし、合成農薬の使用量を大幅に 削減した総合的病害虫管理体系(以下、IPM体系)を確立する。

成果の内容・特徴

  • メロン主要病害虫のIPM体系は、秋冬作のメロンを対象として、天敵などの生物的防除技術と熱水土壌消毒や防虫ネット被覆等の物理的防除技術とを基幹技術とし、これに必要最小限の選択的農薬を組み合わせて体系化したものである(図1)。
  • ワタアブラムシ、アザミウマ類,コナジラミに対しては、ネオニコチノイド系粒剤の定植時処理とコレマンアブラバチ、タイリクヒメハナカメムシ、選択的農薬等を組み合わせることで、実用的に問題のない高い効果が得られる(図2)。ハダニ類はチリカブリダニ、トマトハモグリバエはイサエアヒメコバチを放飼することで、ワタヘリクロノメイガ等のチョウ目害虫は天窓部に防虫ネットを展張することで、高い効果が得られる。
  • 熱水土壌消毒は、作畦前または畦立て後定植前に処理する。熱水の注入量は200L/m2を基準とする。黒点根腐病、つる割病、線虫類等の土壌病害虫に対して有効であり、クロルピクリンとほぼ同等の収量、果実品質が得られる(表1)。
  • 硫黄粉剤の定植10~15日後の1回、または定植10~15日後と40~45日後の2回散布は、うどんこ病に対して卓効を示す(データ略)。べと病、つる枯病に対しては選択的農薬を散布する。
  • IPM体系では合成農薬の散布回数を慣行防除体系の約50%に低減できる(表2)。IPM体系での防除経費は慣行体系の約2倍(熱水土壌消毒、クロルピクリン処理を除く)である。

成果の活用面・留意点

  • 総合的病害虫管理を実施する場合には、天敵、熱水土壌消毒の具体的な利用法を概説した「施設メロンのIPMマニュアル(仮題)」(問い合わせ先:農業・生物系特定産業技術機構、中央農セ)及び「熱水土壌消毒」((社)日本施設園芸協会)を参考とする。
  • 本体系は、熊本県の代表的作型である秋冬作を対象に組み立てたものである。他地域や他の作型への応用を行う際は、天敵の利用時期等の細部についての改良を要する。

具体的データ

図1 秋冬作の施設栽培メロンの総合的病害虫管理体系

 

表1 メロン黒点根腐病に対する熱水土壌消毒の被害抑制効果

 

表2 総合的病害虫管理区(IPM区)と農家慣行防除区における化学合成農薬の散布回数と防除経費

 

図2 試験ほ場における各種害虫の発生推移と薬剤処理,天敵放飼時期

 

その他

  • 研究課題名:施設メロンの病害虫防除技術の体系化と実証
  • 課題ID:07-05-04-*-19-03
  • 予算区分:IPM
  • 研究期間:1999~2003年度
  • 研究担当者:柏尾具俊、小板橋基夫、西 和文(野茶研)、行徳 裕(熊本農研セ)、江口武志(熊本農研セ)、横山 威(熊本農研セ)、森山美穂(熊本農研セ)
  • 発表論文等:
    1)柏尾具俊(2002)農業総覧 病害虫防除・資材編 追録8号, 農文協, 900の4-11.
    2)西 和文ら(2002)熱水土壌消毒,日本施設園芸協会,185pp.