初期伸長性に優れ株出安定多収なサトウキビ新品種「NiTn18」

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要約

サトウキビ「NiTn18」は、初期生育が旺盛であり、萌芽も優れるため、春植、株出共に安定して多収である。低温下でも萌芽が良好であることから、無マ ルチ株出栽培でも「NiF8」より多収となる。低温や肥培管理等の要因により「NiF8」が少収となる地域に普及することによってサトウキビ生産の安定が 図れる。

  • キーワード:サトウキビ、初期伸長、安定多収、無マルチ、低温萌芽性
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・さとうきび育種研究室
  • 連絡先:電話0997-25-0100、電子メールyoshifum@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

鹿児島県熊毛地域は、サトウキビの単位収量が比較的高い地域であり、現在、早期高糖性品種「NiF8」が栽培面積の98%を占めている。しかし近年、冬春 期の低温、農家の高齢化や大規模化によるマルチ等の肥培管理不足、機械収穫面積の増加等の影響によって単位収量の低下が問題になってきている。そこで、 「NiF8」が少収となる条件下でも、安定して株出多収性を発現する品種を育成し、熊毛地域のサトウキビ生産の安定を実現する。

成果の内容・特徴

  • 「NiTn18」は、葉の病害に強く茎揃いが良好な「KF81-39」を母本に、初期伸長性、萌芽性に優れる高糖品種「ROC11」を父本にして1990年に交配を行い、1991年に実生を植付けて以降、株出の収量性を重視して選抜した品種である。
  • 「NiF8」よりも初期伸長が良好で茎が長く、茎数が多い茎数型系統である。
  • 「NiF8」よりも春植、株出で原料茎重、可製糖量が多い。
  • 低温下での萌芽性に優れ、無マルチで株出栽培を行った場合でも、「NiF8」よりも 多収となる。
  • 繊維分が多いために可製糖率は「NiF8」よりも低い。
  • 黒穂病抵抗性は“極弱”で、「NiF8」よりも弱いが、圃場での発生は認められていない。
  • 「NiF8」が多収となる圃場では、伸びすぎて乱倒伏することがある。

成果の活用面・留意点

  • 低温、肥培管理等の影響によって「NiF8」が少収となる圃場での作付けに適する。
  • 黒穂病に弱いので、黒穂病多発地帯での栽培は控える。黒穂病が発生した場合は、 「NiF8」に速やかに置き換える。
  • 茎伸長が良好であり、多収圃場では伸びすぎて乱倒伏することがあることから培土等の管理時期は「NiF8」よりも早めに行い、土を株の中までしっかり入れる。

具体的データ

表1.サトウキビ新品種候補系統「KF92-93」の特性概要

 

その他

  • 研究課題名:南西諸島の低収量地域でも株出多収性を発現するさとうきび品種の育成
  • 課題ID:07-03-05-01-06-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1991∼2005年度
  • 研究担当者:寺島義文、杉本明、氏原邦博、岡三徳、勝田義満、前田秀樹、下田聡、水本文洋