肉用繁殖牛の妊娠期における飼料イネサイレージの単味給与と子牛生産性

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要約

肉用繁殖牛の妊娠期における飼料イネサイレージの単味給与は哺乳量および分娩後の子牛発育には影響はないが、胎子発育および分娩後の繁殖機能(発情回帰、受胎性等)に悪影響を及ぼすので、単味給与する場合は大豆粕を補給する必要がある。

  • キーワード:飼料イネ、サイレージ、稲発酵粗飼料、、肉用繁殖牛、子牛生産
  • 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・草地管理利用研究室、飼料生産研究室
  • 連絡先:電話096-242-7757、電子メールyuji@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地(飼料利用)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料イネは飼料自給率の向上とともに、稲の生産調整の強化に円滑に対応できるため、九州地域においてもその栽培面積が増加 傾向にあり、特に、九州地域は我が国の主要な肉用子牛生産地帯であるため、飼料イネサイレージを肉用繁殖牛用飼料として利用したいとの要望が強い。しか し、飼料イネサイレージの給与が肉用繁殖牛に及ぼす影響についてはほとんど検討されていない。よって、飼料イネサイレージの合理的給与法を明らかにするた めに、肉用繁殖牛の妊娠期における飼料イネサイレージの単味給与が子牛生産性に及ぼす影響について検討する。

成果の内容・特徴

  • 肉用種成雌牛8頭(平均体重505kg)を供試し、妊娠期は日本飼養標準(2000年版)のTDN要求量を飼料イネサイレー ジ(品種スプライス)のみで給与する単味区(4頭)と飼料イネサイレージと大豆粕1kgを給与する大豆区(4頭)を設けた。分娩後の授乳期は両区とも妊娠 期飼料に濃厚飼料を日本飼養標準(2000年版)に準じて補給した。なお、妊娠期は1番刈(出穂期)飼料イネサイレージを、授乳期は2番刈(黄熟期)飼料 イネサイレージを給与した。
  • 飼料イネサイレージの粗蛋白質含量は肉用繁殖牛用飼料としてに一般に利用されているイタリアンライグラス乾草(出穂期)の50~70%と低く、アミノ酸含量は35~50%と粗蛋白質含量よりもさらに低い傾向にある(表1)。
  • 分娩前16週間の平均TDN摂取量は単味区は日本飼養標準の妊娠期要求量の約80%、大豆区は妊娠期要求量の約100%であり、CP(粗蛋白質)摂取量は単味区は妊娠期要求量の約90%、大豆区は妊娠期要求量の約140%である(図1)。
  • 妊娠期の体重増加量は大豆区の50.8kgに対し、単味区は2.8kgで、子牛生時体重は単味区が大豆区より軽く、単味区に1頭死産が発生しており、妊娠期に飼料イネサイレージのみの単味給与は避ける必要がある(図2、表2)。
  • 大豆区は分娩~受胎間隔および授精回数は正常で連産が可能である。それに対し、単味区は分娩~受胎間隔は100日以上であり、受胎に要した授精回数も2.3回と多く、繁殖機能の低下がうかがわれる。哺乳量および分娩後の子牛発育は両区に差異は認められない(表2)。
  • 血液性状は分娩前16週時は両区とも正常な値であり、大豆区はその後分娩時まで正常な値で推移するが、単味区は分娩前8週時においてヘマトクリット値は30%以下、総蛋白量は6g/dl以下になり、妊娠の経過とともに低下傾向を示す(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 九州地域における飼料イネサイレージを利用した肉用子牛生産に適用できる。
  • 肉用繁殖牛の妊娠期に飼料イネサイレージ(1番刈り、出穂期)を単味給与する場合は大豆粕を約1kg補給する必要がある。

具体的データ

表1 供試飼料の成分組成と栄養価(DM中)

 

図1 日本飼養標準に対する摂取割合

 

図2 体重の推移

 

図3 血漿総蛋白量の推移

 

表2 繁殖機能および子牛生産性

 

その他

  • 研究課題名:飼料イネサイレージの肉用繁殖牛への通年給与技術の開発
  • 課題ID:07-02-02-*-24-03
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:中西雄二、平野 清、小路 敦、小林良次、服部育男、佐藤健次