肥育後期豚から排泄される環境負荷物質を低減する飼料の設計とその効果

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要約

飼料中の粗蛋白質およびリン含量を下げアミノ酸とフィターゼを添加するとともに、銅と亜鉛の添加量を自主規制上限値から要求量に近づけた飼料を肥育後期豚 に給与することにより、窒素、リン、銅、亜鉛蓄積量に影響することなく、これらの糞尿中排泄量をそれぞれ28、39、51、34%低下させることができ る。

  • キーワード:窒素、リン、銅、亜鉛、フィターゼ、ブタ、家畜栄養
  • 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・豚飼養研究室
  • 連絡先:電話096-242-7749、電子メールkaji@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜)、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

水質汚濁防止法による畜産業からの窒素・リン排出規制の強化、肥料取締法改正による豚ぷん堆肥の銅・亜鉛含有量の表示義務 規程の制定等、豚による環境への負荷を軽減することが今後の養豚業の維持、発展に重要な課題となっている。豚から排泄される環境負荷物質の排泄量を削減す るための基本方策はこれらの過剰給与を避けることである。そこで、養豚業から排出される環境負荷物質でこれまで最も重要視されてきた、窒素・リン・銅・亜 鉛を同時に低減する飼料を開発し、開発された飼料の給与による肥育後期豚からの環境負荷物質排泄量低減効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 飼料中含量としての要求量が低い肥育後期豚(70~115kg)においても、窒素、リン、銅、亜鉛排泄量を削減するためには、これらの過剰な給与を避ける飼料配合設計が有効である。
  • 通常の飼料組成である対照飼料(粗蛋白質(CP)含量14.7%、非フィチンリンおよびリジン含量が要求量の110%、無機態の銅および亜鉛を自主規制上 限量(銅10、亜鉛50mg/kg)添加)に対して、環境負荷物質の排泄量を低減させる肥育後期豚用飼料(低減飼料)は、CPを下げ(CP12.2%)、 無機リン無添加、不足する4種のアミノ酸とフィターゼ500単位/kgを添加し、無機態の銅および亜鉛を3および20mg/kgの添加量とすることで配合 できる。(表1)。
  • 対照飼料と低減飼料を給与した肥育後期豚では、窒素、リン、銅、亜鉛の蓄積量には差が認められず、これらの糞尿中排泄量は対照飼料を給与した場合と比較して低減飼料の給与により、それぞれ約28、39、51、34%低下させることができる(表2)。
  • 22日間の対照飼料および低減飼料の制限給与(2100g/日)による増体日量(775および759g/日)に差は認められない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • フィターゼは、豚が利用できない穀物中のフィチンリンを加水分解し、フィチンリンに結合している銅や亜鉛を遊離することのできる酵素。
  • フィターゼ500単位/kgの無機リンおよび無機亜鉛の代替効果は、最大でもそれぞれ0.08%および4mg/kgとして、それぞれの要求量を満たすように配合設計すること。

具体的データ

表1 対照飼料と環境負荷物質低減飼料の配合割合(%)および成分値

 

表2 窒素、リン、銅、亜鉛の出納成績と排泄量低減効果

 

その他

  • 研究課題名:低コスト環境負荷低減飼料開発のための飼料原料の栄養価ならびに豚の栄養生理状態への影響の解明
  • 課題ID:07-04-07-*-05-03
  • 予算区分:地域新技術型
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:梶 雄次、勝俣昌也、松本光史