リアルタイムPCR を利用した一塩基多型の迅速検出技術

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要約

リアルタイムPCR装置を使用した一塩基多型(SNP)の迅速な識別技術を開発した。 リアルタイムPCR 装置でSNPを含む100から500塩基対のDNA断片を増幅し融解曲線分析を行うことで電気泳動を行わずに1時間20分でSNPの検出が可能である。

  • キーワード:DNAマーカー、SNP、PCR-CTPP、リアルタイムPCR、融解曲線分析
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能研究部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話096-242-7564、電子メール domon@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・植物バイテク
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

平成15年の改正関税定率法の施行により、税関等で育成者権の侵害が明らかになった物品の輸入差し止めが可能になった。従 来のPCRを利用した品種識別技術はゲル電気泳動を行うため解析に2-3時間を要する。一方、生鮮食料品として輸入される作物品種の識別を行う場合解析の 迅速化が求められていることから、電気泳動を行わない遺伝子型の識別法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 本技術は、PCR with confronting two pair primers (PCR-CTPP)とロシュ・ダイアグノスティックス社のリアルタイムPCR装置”LightCyclerTM”の組合せによってSNPの検出を行う。 PCR-CTPP法の概念図を示す(図1)。
  • 本技術は、多型検出に電気泳動を必要としないため分析所要時間は1時間20分であり、同種の技術としては迅速である。
  • モデル実験にイグサ品種を供試した。融解曲線分析の結果を示した図2の実線は品種「ひのみどり」,破線は品種「岡山3号」の融解曲線。「ひのみどり」以外の品種では二つのピークが現れるため品種の識別が可能である。リアルタイムPCR装置を使用したHPA01マーカーには次の4種類のプライマーを併用する。
    OF:5'-GCTTGTTTGGGCTGGTAAAAGATTA-3',
    OR:5'-AATTCAGCCCCAAATGATTAAAATG-3',
    IF-A: 5'-AGTTTTGTTGGATTTAATTGTTAAAGGAA-3',
    IR-CC: 5'-TTGTATCCAACATCTGATATCTCCCC-3'

成果の活用面・留意点

  • リアルタイムPCR装置を使用したSNPマーカーによる品種判別は迅速であるため、多点検定に先立って行うスクリーニングに有効である。
  • 品種を同定するためには多数の遺伝子座について検定する必要がある。
  • DNA抽出から遺伝子型の検定に至る一連の具体的な手法は農林水産省種苗課のホームページで分析マニュアルとして公開されている。
  • 開発されたSNPマーカーは特許出願中である(特願2003-408330 ”イグサ品種「ひのみどり」の識別マーカー”)。
  • リアルタイムPCR装置の機種ごとに再現性を確認する必要がある。

具体的データ

図1.PCR-CTPP法の概念図。

 

図2.リアルタイムPCR装置による融解曲線分析の結果。

 

その他

  • 研究課題名:SNP分析によるイグサ品種識別法の開発
  • 課題ID:07-07-01-**-09-03
  • 予算区分:ネギ・イグサ
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:土門英司、斎藤彰、木村貴志
  • 発表論文等:
    1) 農林水産省生産局種苗課、植物のDNA品種識別についての基本的留意事項より、分析マニュアル”DNA分析によるいぐさ品種「ひのみどり」の識別”
    2) 特願2003-408330 ”イグサ品種「ひのみどり」の識別マーカー”
    3) SNP分析によるイグサ品種識別法の開発と実用化, 斎藤彰・土門英司・木村貴志(2003.9) 育種学研究5、別冊2号:176