体細胞クローン胚におけるDNAメチル化の検出
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要約
クローン胚より抽出したDNAに亜硫酸水素ナトリウム処理後、サテライトI領域を増幅し、メチル化部位のみ消化する制限酵素による特異的消化を行うことでメチル化状態を定量的に解析でき、体外受精胚と比べたメチル化状態が比較できる。
- キーワード:家畜繁殖、メチル化、亜硫酸水素ナトリウム、クローン胚
- 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・繁殖技術研究室
- 連絡先:電話096-242-7746、電子メールmasashi@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
効率的家畜生産のために体細胞クローン技術が精力的に研究・実証されているが、クローン個体作成効率を向上させるための解決すべき課題は依然残されてい
る。これらの課題点の一つとして、移植核のドナー細胞ゲノムの不完全な脱メチル化と胚の発育不全との関連が注目されており、その検出と解明によるクローン
胚生産効率向上が急務である。そこで、体細胞クローン胚のゲノムメチル化程度を簡易的に定量化および体外受精胚等との比較評価ができる検出法の確立を目的
とする。
成果の内容・特徴
- 体細胞および初期胚由来栄養膜細胞(TB細胞)よりそれぞれ抽出したDNAを亜硫酸水素ナトリウム処理することで、メチル化されないシトシン(C)をウラシル(U)に変換し、メチル化されたシトシンは変換されず(C)の状態のDNAを調製する。
- 亜硫酸水素ナトリウム処理DNAを遺伝子近傍に存在する散在性反復配列であるサテライトI領域を増幅して得られた211bp
のPCR産物を5'-CCGC-3'を認識して切断するAciI制限酵素により処理することで、メチル化度合いによる消化程度の差異を利用して、全体産物
に対する消化断片の比率からメチル化状態を評価できる(図1)。
- AciI制限酵素消化後の小断片の解析には10%ポリアクリルアミドを使用して電気泳動し、DNA染色にはサイバーゴールドを使用することにより感度の高い解析ができる。(図2)。
- 単一~小数ウシ胚におけるメチル化解析および数量化も可能である(図3、表1)。
- 体外受精胚と核移植胚とにおけるメチル化比較の結果、移植胚におけるメチル化率が体外受精胚と比較して高い傾向が見られる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 本手法を利用することで、体細胞および少数胚におけるメチル化解析が可能であり、特に、核移植胚における正常性評価への利用が考えられる。
- 本解析法では、サテライト I領域におけるメチル化のみの解析であり、機能性発現遺伝子領域におけるメチル化情報は得られないため、より精密な評価を行う際には、複数の遺伝子領域におけるメチル化解析を実施することが望ましい。
具体的データ
その他
- 研究課題名:クローン胚の初期発生に関わる遺伝子発現の検討
- 課題ID:07-04-05-*-07-03
- 予算区分:地域バイテク
- 研究期間:2000~2003年度
- 研究担当者:高橋昌志、阪谷美樹、小林修司、志村英明(大分畜試)、志賀一穂(大分畜試)、谷口雅律(熊本農研センター)