マウスGFPモデルを用いた初期胚RNA干渉の実証
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要約
GFP遺伝子に対する二本鎖RNAを簡易的に合成し、GFP遺伝子導入マウス初期胚の細胞質内に導入することで特異的に遺伝子発現を抑制することができる。
- キーワード:家畜育種・繁殖、RNA干渉、特異的遺伝子発現抑制、マウス胚
- 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・繁殖技術研究室
- 連絡先:電話096-242-7746、電子メールmasashi@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
哺乳動物発生や暑熱ストレス応答に関わる遺伝子の発現を特異的に制御することは、個々の遺伝子機能や暑熱による胚損耗等の原因を解明する上で重要な要因で
ある。近年、二本鎖RNA(dsRNA)を用いた発現阻害法(RNA
interference:RNAi)が特異的に遺伝子発現抑制能を有し、新たな遺伝子機能の解析及び発現制御法として非哺乳動物や哺乳動物体細胞での作
用が認められている。しかしながら、哺乳動物初期胚でのRNAi検証は未着手である。そこで、GFP発現マウス初期胚をモデルとして、目的遺伝子の特異的
機能抑制を目指したRNAiの有効性及び利用可能性を実証することを目的とする。
成果の内容・特徴
- dsRNA作成のための目的遺伝子を組み込んだベクターから、RNAポリメラーゼによる転写開始点を両脇からはさむように
PCRにより増幅し、その産物を鋳型とすることにより、少量のベクターからでも一本鎖RNA作成が容易になり、従来dsRNA作成に要した時間の大幅な短
縮が可能である(図1)。
- 緑色蛍光タンパク質(GFP)発現マウス1細胞期胚にGFPdsRNAを導入することで、GFP発現が抑制され(図2)、その効果は最低4日間抑制される(図3)。
- マウス胚に導入されたdsRNAはEGFP遺伝子発現のみを抑制し、内因性遺伝子であるOct 3/4発現への影響は及ぼさない(図4)。
成果の活用面・留意点
- 本研究成果により、簡易に導入二本鎖RNAを合成する手法が確立され、その阻害効果も確認されたことから、有用遺伝子発現制御法として家畜胚等への応用が考えられる。
- dsRNAによる内因性遺伝子阻害の実証例がまだ少ないので、今後、複数の遺伝子における阻害作用の検証が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:Double stranded RNAを用いた特異的遺伝子制御による哺乳動物胚の発生・分化機構の解明
- 課題ID:07-04-05-02-14-03
- 予算区分:パイオニア
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:高橋昌志、阪谷美樹、小林修司、細江実佐(生物研)、古澤 軌(生物研)、徳永智之(生物研)
- 発表論文等:J Mammal Ova Res 20(3):99-105 2003