主要貯蔵タンパク質がないダイズ系統

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要約

ダイズ子実中の主要貯蔵タンパク質であるβ-コングリシニン(7S)とグリシニン(11S)の全てのサブユニットを欠失させたダイズ系統を作出した。本系統は生育異常を示さず、子実生産が可能で、その子実中には高濃度の遊離アミノ酸が蓄積する。

  • キーワード:ダイズ、貯蔵タンパク質、β-コングリシニン、グリシニン、遊離アミノ酸
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・大豆育種研究室
  • 連絡先:電話096-242-7740、電子メール masakazu@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ダイズ子実中の主要貯蔵タンパク質であるβ-コングリシニン(7S)とグリシニン(11S)は子実全タンパク質の約70%を占めており、この両成分の性質 がダイズの加工適性ならびに栄養性に大きく影響していることから、ダイズ貯蔵タンパク質の特性を改良するにはβ-コングリシニンならびにグリシニン含量を 変化させることが有効である。
このため、両タンパク質のサブユニットの全て、あるいは一部を遺伝的に欠失もしくは低減したダイズを作出する。

成果の内容・特徴

  • β-コングリシンの全サブユニットが欠失した系統QY2(九州沖縄農研育成)とグリシニンの全サブユニットが欠失した系統 EnB1(作物研育成)との交雑後代のF2種子からβ-コングリシニンおよびグリシニンの全サブユニットを欠失する系統(以下、QF2と呼ぶ)を作出でき る(図1、図2)。
  • QF2系統は生育異常を示さず、子実生産が可能である(表1)。
  • QF2系統の子実は高濃度の遊離アミノ酸を蓄積し、特にアルギニンを普通ダイズに比べ8倍以上蓄積する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • QF2系統を交配親とすることでサブユニット構成の異なる研究素材を作出できる。
  • 子実中の遊離アミノ酸の蓄積機構の解明するため、QF2系統を研究素材として利用する。

具体的データ

図1 QF2の育成経過

 

図2 子実タンパク質のSDS-PAGE像

 

図3 子実中の遊離アミノ酸含量

 

表1 主要農業形質

 

その他

  • 研究課題名:だいずの暖地向き良質多収品種の育成
  • 課題ID:07-02-05-01-01-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2002年度
  • 研究担当者:高橋将一、石本政男、羽鹿牧太、矢ヶ崎和弘、松永亮一、小松邦彦、喜多村啓介、植松芳彦、柏葉晃一
  • 発表論文等:
    1)Takahashi et. al. (2003) Planta 217:577-586.
    2)特許出願 高遊離アミノ酸含有ダイズの作出法.特願2003-342020