飼料としての利用を目的に選抜したサトウキビ種・属間交雑系統の特性

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要約

製糖用サトウキビとサトウキビ野生種、スイートソルガム等との種・属間交雑で作出した系統には、多収性と高い株再生力を示す系統が認められる。嗜好性も良く飼料作物としての利用が期待できる。ブリックスは低く製糖原料用には不適である。

  • キーワード:株再生力、サトウキビ、種・属間交雑、飼料作物、多収性
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・さとうきび育種研究室
  • 連絡先:電話0997-25-0100、電子メールsugiaki@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、畜産飼料作
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

南西諸島は子牛生産を中心とする畜産が盛んで、飼料作物の作付面積も多く、サトウキビと競合する場合も見られる。畜産の振興、及びサトウキビとの競合の回 避には飼料作物の収量向上が有効である。そこで、台風・干ばつへの抵抗性が比較的強いと想定されるサトウキビ種・属間交雑系統の中から、多収性、高い株再 生力と、コーンハーベスタ収穫を想定した栽培体系への適応性を具える系統を選定し、飼料価値を評価して南西諸島の広範な地域に適応性の高い飼料用のサトウ キビを開発する。

成果の内容・特徴

  • サトウキビとサトウキビ野生種(Saccharum spontaneum )、スイートソルガム(Sorghum bicolor )等との交配によって作出した系統には、サトウキビの慣行的栽培(植溝有り、畦幅1.1m)でも、飼料用トウモロコシの栽培に用いられているコーンハーベスタ収穫を想定した栽培(植溝無し、畦幅0.8m)でも多収性と高い再生力を示すものが認められる。(表1)
  • それらの系統は収穫後の株の再生と生育が優れるため再生株の方が収量が多い。2回収穫後の株出し(3番草)の生育も優れる。(表1)
  • 春に収穫した後の再生株は生育が優れ、短期間の栽培でも収量が多い。(表1)
  • ブリックスは低く、製糖用には不適である。(表1)
  • ソルガムやエンバクと比べ粗蛋白含量が低いが、他の一般飼料成分には大きな差異は認められない。嗜好性は良い。(表2)
  • 有望系統は種子島以外の南西諸島でも比較的多収である。(表3)

成果の活用面・留意点

  • 既存作物の収量が少ない圃場を普及対象とした多収性飼料作物を開発するための素材としての利用が期待される。
  • 地域、品種や収穫時期により収量差が大きいので、地域の気象条件、経営の態様に応じた収穫時期、品種の選定が必要である。
  • 製糖用サトウキビの生産地域を普及対象とする品種の育成に際しては、製糖用サトウキビの重要病害である黒穂病への抵抗性が必要である。

具体的データ

表1 多収性サトウキビ系統の再生株(栽培期間11~11月、3~9月の)収穫調査成績

 

表2 多収性サトウキビ系統の嗜好性と一般飼料成分

 

表3 多収性サトウキビ系統の宮古島、石垣島、および奄美大島での収穫調査成績

 

その他

  • 研究課題名:さとうきび種属間交雑を用いた不良環境に適応性の高い高品質多収飼料生産技術の開発
  • 課題ID:07-07-02-02-28-03
  • 予算区分:交付金、ブラニチ3系
  • 研究期間:1998~2003年度
  • 研究担当者:杉本明、神谷充、寺島義文、氏原邦博、福原誠司
  • 発表論文等:
    1) 杉本明ら (2000) 熱帯農業44別(2):21-22
    2) 杉本明ら (2001) 熱帯農業45別(2):59-60
    3) 杉本明ら (2003) 熱帯農業47別(2):105-106