西日本に分布するムギ類赤かび病菌のマイコトキシン産生性

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要約

西日本から分離されるムギ類赤かび病菌(Fusarium graminearum )は、米培地でデオキシニバレノールよりニバレノール産生量の多い菌株が全体の半数以上を占める。調査した範囲でT2トキシンを産生する菌株はないが、大多数が同培地でゼアラレノンを産生する。

  • キーワード:ムギ、マイコトキシン、DON、NIV、T2トキシン、ZEA
  • 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・上席研究官
  • 連絡先:電話 096-242-7728, 電子メール ntakashi@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

厚生労働省が平成14年に設定したコムギについてのマイコトキシンの暫定基準はデオキシニバレノール(DON)に関するも ののみで、他のマイコトキシンに関しては毒性試験や分布に関する基礎データが不十分である。ニバレノール(NIV)はDONと同じく赤かび病菌によって産 生されるトリコテセン系のマイコトキシンの一種であるが、DONとは毒性が異なるとする報告があることから、厚生労働省研究班の調査研究においてはNIV も調査・分析の対象とされている。このため、我が国に分布する赤かび病菌が産生するマイコトキシンの種類に関する調査が早急に求められている。

成果の内容・特徴

  • 2002年に滋賀県以西の18県より赤かび病罹病穂を収集し、病原菌の分離同定を行った結果では、典型的な赤かび病の病徴であるスポロドキアから分離された185菌株は2菌株を除き全てFusarium graminearum である。
  • 分離菌株から各県4菌株を選定し、米培地で25℃、2週間培養後、デオキシニバレノール、ニバレノール、T2トキシン (T2)、ゼアラレノン(ZEA)の産生能を公定法(マイコトキシン検査協会によるGC-MS法、検出限界0.05ppm)により調べた。その結果から、 DONよりNIV産生量が多い菌株(NIV産生型菌株)が全体の57%を占め、西日本に分布するムギ類赤かび病菌はNIV産生型の菌株が多い。また、T2 を産生する菌株はないが、96%の菌株がZEAを産生する(図)。
  • DON産生型菌株およびNIV産生型菌株の中でも、各マイコトキシンの産生量には大きな差がある(図)。

成果の活用面・留意点

  • 海外および北海道ではDON産生型菌株がほとんどであるのに対して、西日本ではNIV産生型菌株も多く分布することから、今後我が国の赤かび病マイコトキシンの研究対象としてNIV産生型菌株をより重視する必要がある。
  • 西日本で赤かび病が発生した圃場でDONが検出できない場合は、NIV産生型菌株が関与している可能性が高い。

具体的データ

図 西日本における麦類赤かび病菌の米培地(in vitro)におけるマイコトキシン産生性(2002)

 

その他

  • 研究課題名:西日本における赤かび病菌の個体群動態の解明と生態的制御技術の開発
  • 課題ID:07-08-01-02-13-03
  • 予算区分:食品総合
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:中島隆、吉田めぐみ