日本で発生しているトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)は3系統ある
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要約
九州地域3ヶ所、東海地域5ヶ所計8TYLCV分離株の全ゲノム塩基配列を決定とDDBJ登録、および既報4分離株と併せての比較から、現在日本で発生し
ているTYLCVには、九州1系統(長崎株;2774塩基)、東海2系統(静岡株;2791塩基、愛知株;2787塩基)の3系統が存在する。
- キーワード:トマト、黄化葉巻病、TYLCV、系統
- 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・病害遺伝子制御研究室
- 連絡先:電話096-242-7730、 電子メールsued@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
1996年TYLCVの初確認以降、九州地域はTYLCV-Is(イスラエル系統)、東海地域はTYLCV-Is.M(イスラエルマイルド系統)と近縁の
ウイルスがそれぞれ発生していることが報告されている。しかし、日本由来の既報のTYLCV全ゲノム塩基配列データがわずか4分離株(九州1株、東海3
株)であったことから、その裏付けが希薄であった。そこで、九州、東海各地の罹病植物を採集し感染しているウイルス株の全塩基配列を決定し、データベース
に登録することで国内のTYLCVデータを増強する。さらに、ウイルス株間の系統比較を行うことで、各発生地域のウイルス株の系統を掌握しウイルス病の予
察、診断に役立てる。
成果の内容・特徴
- 九州及び東海地域で採集したTYLCV罹病植物(トマト、トルコギキョウ、ウシハコベ)計8サンプルに感染しているウイルス株の全ゲノム塩基配列を決定後、DDBJへ登録し各々アクセッション番号を取得する(表1)。
- 国内由来の12分離株(新規8、既報4)の全ゲノム塩基配列を比較したところ、九州1系統(長崎株)、東海2系統(静岡株、愛知株)3種類の系統(株)に分けられる(表2)。
- 静岡(3分離株)、愛知(5分離株)両株間の共通配列を比較すると、IR領域内の4塩基の差異(表2)以外にも、計22ヶ所
(IR領域9ヶ所、Rep8ヶ所、CP3ヶ所、C2、C3各1ヶ所)の相違点が見出され、その内5ヶ所でアミノ酸置換が確認されることから、両株は近縁で
あるが明らかに由来の異なるウイルス株である(表3)。
- 日本に侵入し現在発生しているTYLCVは、TYLCV-Is に近縁の長崎株(2774塩基)、TYLCV-Is.M に近縁の静岡株(2791塩基)及び愛知株(2787塩基)の3系統である。
成果の活用面・留意点
- 登録した塩基配列データを活用することで、精度の高いプライマー設計が可能となり遺伝子診断法の充実が図れる。
- 系統ごとの発生分布域が把握できる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:トマト黄化葉巻病の防除に関する研究
- 課題ID:07-08-01-*-04-02
- 予算区分:侵入病害虫
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:上田重文、大貫正俊、花田 薫、岩波 徹
- 発表論文等:Uedaら (2004) Three distinct groups of isolates of Tomato
ow leaf curl virus in Japan and construction of infectious clone. J
Plant Pathol 70(4)