セジロウンカの加害によってイネ体内に誘導される白葉枯病抵抗性

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要約

セジロウンカの加害を受けた5~6葉期のイネに白葉枯病菌を接種した場合、対照である無加害のイネに比べて病斑の拡大が有意に抑制される。本現象(発病抑 制効果)はセジロウンカの吸汁行動が引き金となって、イネの体内に白葉枯病に対する抵抗性が誘導されることを示唆している。

  • キーワード:セジロウンカ、白葉枯病、発病抑制効果、誘導抵抗性、イネ
  • 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
  • 連絡先:電話096-242-7731, 電子メールmsatou@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

セジロウンカの加害を受けたイネにおいて、糸状菌病であるいもち病に対する抵抗性が誘導されるという現象が確認されてい る。この現象は、害虫の加害が病害の感染に影響していることを示しており,他の病害についても同様の現象が存在する可能性が考えられる。そこで、イネの細 菌病である白葉枯病に着目し、セジロウンカの加害が本病害の発病におよぼす影響について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 雌雄各10頭のセジロウンカに2日間加害されたイネ株では、白葉枯病の発病が抑制される(図1)。針で人工的に傷を付けたイネ株では、発病に影響は見られない(データ略)。
  • セジロウンカを雌雄に分け、別々にイネを加害させても白葉枯病の発病が抑制される。発病の抑制程度は加害量(吸汁量)の多いメスの方が強い傾向が見られたが、雌雄間で有意な差は認められない(図2)。
  • 白葉枯病に対する発病抑制効果は、吸汁したセジロウンカの頭数に依存するものと考えられる(図3)。
  • セジロウンカは葉節部付近を中心にイネ株全体を加害するが、イネ株の葉鞘部を加害させた場合でも、葉の先端に剪葉接種した白葉枯病の発病は抑制される(図4)。
  • 以上の結果は、セジロウンカの吸汁加害が刺激となって、イネの体内に白葉枯病に対する抵抗性が誘導されることを示唆している。

成果の活用面・留意点

  • セジロウンカの加害を受けたイネにおいて、細菌病に対する抵抗性が誘導されている可能性を示す新しい知見であり、病害防除への応用が期待される。
  • イネに被害をおよぼす各種の昆虫(トビイロウンカ・ツマグロヨコバイ等)と病原体(糸状菌・細菌・ウイルス等)間の相互作用を明らかにする足掛かりとなる。

具体的データ

図1 セジロウンカの加害を受けたイネにおける白葉枯病に対する発病抑制効果

 

図2 白葉枯病の発病抑制効果におよぼすセジロウンカの雌雄の影響

 

図3 セジロウンカの加害頭数と白葉枯病の発病抑制効果

 

図4 イネの葉鞘部へのセジロウンカの加害と発病抑制効果

 

その他

  • 研究課題名:イネを介する昆虫と病原微生物との相互関係の解明
  • 課題ID:07-08-04-*-06-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:佐藤 雅・菅野紘男