農林業センサスを利用した家畜ふん尿由来有機物の流通量及び圃場投入量の推定
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要約
2000年農林業センサス農家調査票に基づき、有畜農家毎の家畜ふん尿由来有機物の圃場への投入パターンを類型化することにより、正味の流通可能量及び単位面積当たり圃場投入量を推定できる。
- キーワード:農林業センサス、環境指標、家畜ふん尿、有機物投入量、流通可能有機物量
- 担当:九州沖縄農研・環境資源研究部・土壌微生物研究室
- 連絡先:電話096-242-7765、電子メールhasimoto@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤(土壌肥料)
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
営農家の圃場面積や家畜飼養頭数等は5年毎に調査される農林業センサスにより把握できる。2000年の調査では営農活動が
環境に及ぼす影響評価として家畜ふん尿の処理方法についても情報が集約されているので、各有畜農家由来の家畜ふん尿発生量ばかりではなく、家畜ふん尿の圃
場への投入パターンの解析が可能となる。そこで、九州沖縄管内を対象に、有畜農家毎の家畜ふん尿の投入パターンを農林業センサス農家調査票に基づき類型化
し、家畜ふん尿由来有機物の正味の流通可能量及び単位面積当たり圃場投入量を推定する。
成果の内容・特徴
- 推定手順は以下のとおりである。1農家調査票より各有畜農家が作物栽培等に利用する圃場面積を算出する。2家畜種や飼養頭数
から揮散率20%として発生する家畜ふん尿由来有機物量を算出する。3有畜農家が利用する圃場へ標準量(飼料作210kg N/ha、普通畑作140kg
N/ha、水田作70kg
N/ha)投入した後の残余有機物(見かけの流通可能量)を算出する。4この残余有機物の圃場への投入パターンを農家調査票に基づき類型化(図1)することにより、窒素換算した家畜ふん尿由来有機物の圃場投入量を作目別の標準投入、飼料作圃場への均一多量投入、捨て場圃場への過剰投入として推定できる。なおこの推定結果は、県、市町村、集落単位等自由な区分で集約できる。
- この設定により、正味の流通可能量を福岡県 2,427ton N/県、佐賀県2,684ton
N/県、長崎県3,111ton N/県、熊本県5,790ton N/県、大分県1,832ton N/県、宮崎県6,774ton
N/県、鹿児島県6,117ton N/県、沖縄県1,426ton N/県と推定できる。
- また、各県の単位面積当たり圃場投入量を示すことができる(図2)。
飼料作圃場への均一多量投入や捨て場圃場への過剰投入に対応する、400kg
N/ha以上投入する圃場面積が全圃場面積に占める割合は、福岡県0.7%、佐賀県1.2%、長崎県10.3%、熊本県3.3%、大分県3.0%、宮崎県
20.6%、鹿児島県14.6%、沖縄県5.8%と推定できる。同じく400kg
N/ha以上の投入量が全投入量に占める割合(窒素換算)は、福岡県11%、佐賀県20%、長崎県44%、熊本県30%、大分県26%、宮崎県65%、鹿
児島県48%、沖縄県38%と推定できる。
成果の活用面・留意点
- 有機物過剰投入による環境負荷を改善するための経営評価法、あるいは広域流通システム構築に向けた環境評価法として活用できる。
- この推定法では、正味の流通可能有機物を無畜農家圃場へ標準量投入すると仮定している。
- 推定に必要な2000年農林業センサス農家調査票の利用には、個人情報保護の観点から総務省の承認が必要である(利用許可:平成14年9月6日付総統審第333号)。
具体的データ
その他
- 研究課題名:農林業センサスを利用した環境負荷評価法の開発
- 課題ID:07-06-02-01-06-03
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2002~2004年度
- 研究担当者:橋本知義、神山和則(畜草研)、久保田哲史
- 発表論文等:1) 橋本・久保田(2002) 九州農業研究. 64, 59.