極良食味で早生の温暖地向き水稲新品種候補系統「きぬむすめ(西海232号)」
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要約
水稲「きぬむすめ(西海232号)」は、「日本晴」熟期の早生の粳種である。食味は「コシヒカリ」並の極良食味で、外観品質、収量とも安定して優れる。「祭り晴」等の代替として島根県で普及予定である。
- キーワード:イネ、早生、良食味
- 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・稲育種研究室
- 連絡先:電話0942-52-0647、電子メールmsakai@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・水田作、作物・稲
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
暖地、温暖地では中生の「ヒノヒカリ」または極早生の「コシヒカリ」へ作付が集中している。刈り遅れによる品質低下の防止、台風などの自然災害に対する危険分散のため、熟期の異なる複数の品種を組み合わせて品種構成の適正化を図ることが重要である。そこで、「日本晴」熟期の早生で食味・品質の優れた品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「西海232号」は1991年に極早生、極良食味の「キヌヒカリ」を母とし、縞葉枯病抵抗性、良食味の「愛知92号」(後の「祭り晴」)を父として人工交配を行った組合せから育成された(表1)。
- 出穂期は「日本晴」より1~2日程度遅く、成熟期は同程度から1日程度遅い。暖地では“早生の晩”に属する粳種である(表1)。
- 稈長は「日本晴」より4~5cm長く、穂長は2cm程度短く、草型は“中間型”である。
- 穂発芽性は“やや易”である。耐倒伏性は「日本晴」よりやや強い“中”である (表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子“Pia, Pii”を持つと推定される。葉いもち圃場抵抗性, 穂いもち圃場抵抗性ともに“中”である。白葉枯病抵抗性は“やや弱”である(表1)。
- 収量は「日本晴」よりやや多収である(表1)。
- 玄米の外観品質は「日本晴」並の“中中”である。
- 食味は「コシヒカリ」並の“上中”である(表1、図1)。
成果の活用面・留意点
- 早生の良食味品種として温暖地の平坦部、準平坦部および暖地全域に適する。
- 島根県の奨励品種として「祭り晴」に替えて普及予定であり、普及見込み面積は約 900haである。
- 穂発芽性は“やや易”で耐倒伏性も強くないので、倒伏防止のため極端な多肥栽培は避ける。
- 白葉枯病抵抗性は“やや弱”なので、常発地での栽培を避ける。縞葉枯病にも罹病性であるため、常発地帯での栽培を避ける。
具体的データ


その他
- 研究課題名:暖地の普通期作に適する良食味安定多収水稲品種の育成
- 課題ID:07-02-01-01-07-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1991~2004年度
- 研究担当者:坂井 真、梶 亮太、田村克徳、岡本正弘、西村 実、八木忠之、溝淵律子、平林秀介、深浦壮一、
山下 浩、富松高治、山口末次