極良食味で良質の暖地向き中生水稲新品種候補系統「にこまる(西海250号)」
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要約
「にこまる(西海250号)」は、「ヒノヒカリ」熟期の中生の粳種である。食味は「コシヒカリ」並の極良食味である。外観品質は高温年でも安定して「ヒノヒカリ」より優れる。「かりの舞」と「ヒノヒカリ」の一部に代えて長崎県で普及予定である。
- キーワード:イネ、外観品質、良食味、中生
- 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・稲育種研究室
- 連絡先:電話0942-52-0647、電子メールmsakai@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・水田作、作物・稲
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
九州では、中生の良食味水稲品種「ヒノヒカリ」に作付けが集中しているが、平坦地の「ヒノヒカリ」は気候温暖化の影響を受け、高温による品質低下が生じている。このため、外観品質が優れる極良食味、多収の中生品種を早急に開発する必要がある。
成果の内容・特徴
- 「西海250号」は1996年に九州農業試験場において、多収、良食味品種の育成を目標に早生、多収、良食味の「は系626」(後の「西海232号」)を母とし、早生、多収、極良食味の「北陸174号」を父として人工交配を行った組合せから育成された粳系統である(表1)。
- ヒノヒカリ」に比べ、出穂期、成熟期ともに1、2日程度遅く、九州北部の普通期では“中生の中”の熟期である(表1)。
- 稈長は「ヒノヒカリ」よりやや短く、穂数は少なく、草型は“偏穂重型”である。「ヒノヒカリ」より倒伏しにくく、耐倒伏性は“中”である(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia, Pii”を持つと推定される。葉いもちおよび穂いもち圃場抵抗性はともに“やや弱”で、いずれも「ヒノヒカリ」並である。白葉枯病抵抗性は「ヒノヒカリ」よりやや強く“中”である。穂発芽性は“中”である(表1)。
- 収量は「ヒノヒカリ」をやや上回る(表1)。千粒重は23g程度で「ヒノヒカリ」よりやや大きい(表1)。搗精歩留まりは高い(表1)。
- 白米のタンパク質含有率は「ヒノヒカリ」より低い(表1)。
- 玄米の外観品質は「ヒノヒカリ」より優れ、“上中”である(表1、写真1)。3ヶ年の奨励品種決定調査の成績においても「ヒノヒカリ」より安定して優れている(図1)。
- 食味は「コシヒカリ」、「ヒノヒカリ」並の“上中”である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 中生の多収、良食味品種として暖地および温暖地の平坦部に適する。
- 長崎県の奨励品種として晩生品種「かりの舞」と、県央、県南部の平坦地で作付けされている「ヒノヒカリ」の一部に替えて普及予定であり、普及見込み面積は1100haである。
- いもち病にはやや弱いので、発生が見られた場合は的確な防除を行う。
具体的データ
その他
- 研究課題名:暖地の普通期作に適する良食味安定多収水稲品種の育成
- 課題ID:07-02-01-01-07-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1996~2004年度
- 研究担当者:坂井 真、梶 亮太、田村克徳、岡本正弘、西村 実、八木忠之、溝淵律子、平林秀介、深浦壮一、
富松高治、山口末次