永続性に優れる暖地向きト-ルフェスク新品種候補「ウシブエ(九州10号)」

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要約

ト-ルフェスク「ウシブエ(九州10号)」は、永続性、収量性に優れる中生品種である。九州から東北中部までの広範囲の地域に適応し、特に暖地の放牧草地等における永年的な高品質牧草生産に貢献できる。

  • キーワード:ト-ルフェスク、永続性、暖地向き、永年牧草、放牧、飼料作物育種
  • 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・牧草育種研究室、上席研究官
  • 連絡先:電話096-242-7754、電子メールgaumitsu@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地(草地飼料作)、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

未利用農地等を活用するための省力的・高品質飼料生産技術が求められている。ト-ルフェスクは、暖地における永年利用が期待できる草種の中で高品質であり、この目的に適合するが、暖地における永続性に関して一層の改良が必要である。そこで、永続性を改良して、現在、利用が最も多い中生の「サザンクロス」より収量性に優れる新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 九州のエコタイプ3、外国品種2を構成栄養系とする合成品種である(表1)。
  • 出穂始めは「サザンクロス」より2日早い。中生品種である(表2)。
  • 収量は「サザンクロス」比105(9場所3ヶ年)で、多収である(表2)。
  • 越夏後の再生、越夏後の収量および調査最終年の秋の被度から判断して、永続性は「サザンクロス」より優れる(表2)。
  • 冠さび病抵抗性は「サザンクロス」並の「中」、網斑病に対しては「サザンクロス」 並か強く、葉腐れ病に対しては「サザンクロス」並である(表2)。
  • 放牧条件における現存量は「サザンクロス」より高く維持され(図1)、採食率は「サザンクロス」並である(図2)。
  • 乾物分解率は「サザンクロス」よりやや低く、粗蛋白質含量およびADF含量は「サザンクロス」と同等である(表2)。
  • 採種性は「サザンクロス」より優れる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地を中心に東北中部から九州まで適応可能で、普及見込み面積は5000haである。
  • 転作田や未利用農地を活用した放牧等の省力的牧草生産に活用できる。
  • 越夏性を十分発揮させるため、6月中旬から8月の刈り取り、入牧は避ける。

具体的データ

表1 「九州10号」の構成栄養系の由来

写真1 越夏後の草姿 左:九州10号 右:サザンクロス

表2 トールフェスク「九州10号」の諸特性

図1 放牧試験における年間乾物生産量の標準比

図2 放牧試験における採食率

注)播種翌年からの放牧期間は、2試験地ともに4~10月、放牧回数は長野は3回(利用1年目)、5回(利用2年目)、
宮崎は7回(利用1年目)、6回(利用2年目)。採食率は各放牧時に前後差法による測定の年間平均

その他

  • 研究課題名:ト-ルフェスクの早春・晩秋生長品種の育成 
    暖地における消化性・採食性に優れる新型ト-ルフェスクの育成
  • 課題ID:07-04-04-*-05-04、07-04-04-*-10-04
  • 予算区分:交付金、ブランド・ニッポン
  • 研究期間:1984~2004年度
  • 研究担当者:我有 満、桂 真昭、後藤和美、松岡秀道、松浦正宏、大山一夫、佐藤信之助、長谷 健、上山泰史