収穫適期幅が長く安定多収なサトウキビ新品種候補系統「NiTn20(KF92T-519)」

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要約

サトウキビ「NiTn(KF92T-519)」は、発芽、萌芽、茎伸長が良く、春植え、株出しともに多収である。早期高糖で12月収穫にも適し、黒穂病抵抗性を具える。既存品種では収量が低い地域や黒穂病汚染地域に普及することで、サトウキビの生産性向上が期待できる。

  • キーワード:サトウキビ、安定多収、早期高糖、良萌芽、黒穂病抵抗性
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・さとうきび育種研究室
  • 連絡先:電話0997-25-0100、電子メールsirei@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

沖縄県の沖縄本島南部地域および八重山地域には、土壌肥沃度が低く保水性の低い土壌(島尻マージ)地帯があり、同地帯の圃場ではサトウキビ収量は少ない。また、両地域ともに12月収穫における糖度・株出し収量の低さ、普及品種「Ni9」の黒穂病被害拡大が問題となっている。そこで、土壌肥沃土が低い地域でも安定多収で、12月収穫でも高糖性を発現する黒穂病抵抗性品種を育成し、八重山および沖縄本島南部地域におけるサトウキビ生産性の向上を図る。

成果の内容・特徴

  • 「KF92T-519」は、早熟・高糖性で葉の病害に強い「NiF4」を母本に、黒穂病抵抗性で出芽、萌芽、初期生育、分げつ性に優れる茎数型多収の「NiF5」を父本にして1990年に交配を行い、1991年に実生を植付けて以降、茎数型多収と早期高糖性を重視して選抜した系統である。
  • 発芽、萌芽、茎伸長が優れ、沖縄県八重山地域および本島南部地域において、春植え、株出し共に、「Ni9」よりも安定して原料茎重、可製糖量が多い(表1)。
  • 顕著な早期高糖性を具え(表2)、12月収穫では既存品種より高糖であり(表3)、その後の株出し栽培における収量も多い(表3)。
  • 株出し栽培で発病が多い黒穂病の抵抗性は「強」であり、株出し栽培に適する(表1)。
  • 既存品種では収量が少ない島尻マージ土壌の圃場でも多収である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 八重山および沖縄本島南部地域において「Ni9」、「NiF8」の代替として用いる。12月収穫での活用は特に有効である。
  • 昨年度、同地域向けに登録した新品種「NiTn19」は製糖後期の収穫に適するが、「KF92T-519」は12月収穫等早期の収穫にも適する。また、「NiTn19」が肥沃地向けであるのに対し、「KF92T-519」は既存品種の収量が少ない島尻マージ土壌の圃場での活用に適する。
  • 茎の伸びが良いため、既存品種の茎伸長が良い圃場では倒伏しやすいので注意が必要である。

具体的データ

図1.「KF92T-519」の立毛状況および原料茎

 

表1 サトウキビ新品種候補系統「KF92T-519」の特性概要

 

表2 八重山地域におけるブリックス(%) 表3 沖縄本島南部(島尻マージ)における収穫調査結果

その他

  • 研究課題名:南西諸島の低収量地域でも株出し多収性を発現するさとうきび品種の育成
                      秋・冬収穫向け株出し多収性サトウキビ品種の育成
  • 課題ID:07-03-05-01-06-04、07-03-05-01-12-04
  • 予算区分:交付金、ブラニチ4系
  • 研究期間:1990~2004年度
  • 研究担当者:伊禮 信、杉本 明、氏原邦博、下田 聡、寺島義文、前田秀樹、勝田義満、岡 三徳、水本文洋、
                      境垣内岳雄、松岡 誠
  • 発表論文等:杉本明ら (2003) 日作九支報 69:61-62,63-66