大豆価格高騰下での実需者の国産大豆評価と研究への要望

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要約

国産大豆の不作・価格高騰下においても、実需者は国産大豆を製品差別化や安全性などの面で高く評価している。一方、専用品種の育成や製造技術などに関する研究要望を強く抱いており、品質向上へ向けた研究強化を求めている。

  • キーワード:ダイズ、豆腐、納豆、実需者ニーズ、グループディスカッション、TN法
  • 担当:九州沖縄農研・総合研究部・情報解析研究室
  • 連絡先:電話096-242-7697、電子メールgotok@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・農業経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

本年で施行6年目を迎える新たな大豆政策大綱では、「売れる大豆つくり」を目標に実需者ニーズを踏まえた大豆生産の実現を目指している。一方、気象条件などの影響による不作で大豆入札価格は2年連続で平年の2倍という高値で推移しており、実需者の国産大豆離れが懸念される。そのような状況の中、豆腐・納豆を製造する実需者が大豆価格高騰・不作下において国産大豆にどのような評価をしているのか、またどのような研究を求めているのかは必ずしも明らかとなっていない。そこで豆腐・納豆関連業界団体へのインタビュー、メーカー担当者(社長・工場長クラス)によるグループディスカッションおよびTN法(前東北農業試験場で開発されたアイディア抽出評価法)を実施し、国産大豆に対する評価並びに求めている研究要望について示す。

成果の内容・特徴

  • 豆腐・納豆メーカーの担当者が指摘する国産大豆のデメリットは、供給・価格の不安定性、品質のばらつきであり、安定供給・コスト削減などへ向けた技術開発が依然として重要となっている(図1)。
  • 一方、国産大豆に対する評価として注目できるのは、「地産地消へのアピールができる」「安全・安心」「(商品の)差別化」などであり、食の安全対策や差別化商品開発の素材として国産大豆を高く評価している。大豆の不作・価格高騰下にあっても、実需者は国産大豆を商品展開に欠かせない素材としている(図1)。
  • 豆腐・納豆メーカーの求めている要望として、豆腐では、「製造技術に関する研究」「豆腐専用大豆の育種」「栽培技術に関する研究」「産地・生産者育成」「高品質大豆育種」に、納豆では「納豆専用大豆の育種」「納豆製造技術に関する研究」「特別栽培・新形質大豆育種」に高い評価を与えており、研究機関が対応すべき要望が多い(図2)。
  • 実需者は中小規模の経営が大半を占めるため、自力での研究開発余力に乏しいが、新たな差別化商品開発に意欲的であり、試験研究機関には特に品質向上へ向けた研究強化を求めている。

成果の活用面・留意点

  • TN法は少人数での議論から迅速に様々な意見を抽出し評価するアイディア評価手法であり、出された意見のひとつひとつを参加者全員で評価することに特徴がある。
  • グループディスカッションにより抽出された意見を用いて大量調査を実施することにより、さらに問題の具体化を図ることができる。
  • 参加していただいたメーカーは、九州に立地する大手メーカー4社(豆腐2社、納豆2社)、中規模メーカー2社(豆腐1社、納豆1社)、小規模事業者1社(豆腐1社)である。

具体的データ

図1 豆腐・納豆メーカーにおける国産大豆評価

 

図2 豆腐・納豆業界の求めている研究要望

その他

  • 研究課題名:九州沖縄地域における実需者ニーズ等把握のための情報解析
  • 課題ID:07-01-04-01-07-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:後藤一寿・相原貴之
  • 発表論文等:第57回九州農業経済学会大会個別報告
                     「大豆関連製品製造業の動向および現状と課題に関する考察」