国頭マージ畑における草生帯の赤土流出軽減特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

センチピードグラスからなる草生帯は、主に表面流の流速低下に伴う土砂の沈降と堆積によって赤土流出を軽減する。粒径0.02mm以上の流出土砂に対する草生帯の流出軽減効果は高く、粒径0.002~0.02mmの流出土砂に対する効果は草生帯の幅が大きいほど高い。

  • キーワード:草生帯、赤土流出、粒径、センチピードグラス
  • 担当:九州沖縄農研・環境資源研究部・資源評価研究室
  • 連絡先:電話096-242-7767、電子メールsiono@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

沖縄地方では、降雨時に発生する畑地からの土砂流出(赤土流出)が下流域や沿岸域での環境劣化の一因といわれており、0.01mmオーダー以下の土砂流出軽減対策が急務である。畑地の下流端に設置する草生帯は土砂流出を軽減する対策技術の一つである。草生帯を効率的に活用するためには、その土砂流出軽減特性を明らかにする必要がある。そこで、国頭マージ土壌からなる畑地試験区での現地観測(図1)を行い、芝の一種であるセンチピードグラスを用いた草生帯の土砂流出軽減特性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 裸地区の総流出土砂量と比較して求めた幅0.5~3.0mの草生帯の土砂流出軽減率は31~72%であり、草生帯の幅が大きいほど土砂流出軽減効果が高い(表1)。裸地領域で発生した流出土砂は、0.002~0.02mmの粒径クラスの土砂を多く含む。
  • 表面流出発生時における草生帯試験区の流出土砂流量は、草生帯なし試験区(裸地区)に比べて小さいが、表面流出水の流量には大きな違いがみられない(図2)。また、草生帯の上流端付近に土砂堆積が観察される。これらのことは、草生帯の土砂流出軽減には、草生帯区間における表流水の下方浸透よりも、表流水の流速低下に伴う土砂の沈降と堆積が大きく寄与していることを示す。
  • 草生帯の流出軽減効果は、流出土砂の粒径クラスによって異なる傾向を示す(図3)。0.02mm以上の粒径クラスに対する流出軽減効果は草生帯の幅にかかわらず高く、0.002~0.02mmの粒径クラスに対する効果は草生帯の幅が大きいほど高くなる。一方、0.002mm以下の粒径クラスには流出軽減効果がみられない。

成果の活用面・留意点

  • 赤土流出軽減のための草生帯の諸元決定の際の参考資料となる。
  • 本成果で示した土砂流出軽減率は、草生帯の植被率が目視でほぼ100%、草高7.5cmの条件での結果である。
  • センチピードグラスは初期生育が遅いため、播種時に種子と表土を混和・鎮圧し、種子流亡の防止と出芽・成育の安定に努める。

具体的データ

図1 観測試験区の概要図 表1 草生帯の土砂流出軽減率

 

図2 降雨、表面流出、流出土砂の観測結果 図3 粒径クラス別の流出土砂量

その他

  • 研究課題名:草生帯による土砂流出軽減機能の評価手法の開発
  • 課題ID:07-06-04-01-05-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:塩野隆弘、原口暢朗、宮本輝仁、樽屋啓之
  • 発表論文等:1) 仲村ら (2003) 水と土 132:40-48.
                      2) 塩野ら (2004) 九州農業研究 66:169.
                      3) Shiono et al. (2004) Participatory strategy for soil and water conservation :55-58.