牛肉中カルニチン含量は月齢の影響が大きい
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要約
牛ロース芯における総カルニチン含量は月齢の進んだ牛で増加し、経産雌肥育牛では極めて高い値となる。すなわち、幼牛よりも成牛の肉に多く含まれる。また、牛肉中カルニチン含量を、霜降りや肉色などの見た目によって推定することは困難である。
- キーワード:肉用牛、カルニチン、機能性、経産牛、老廃牛、畜産物・品質
- 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・栄養生理研究室
宮崎県畜産試験場・飼養部・肉用牛科
- 連絡先:電話096-242-7747、電子メールtsune@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)、畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
体脂肪燃焼や抗疲労効果のある機能性成分カルニチンは、牛肉など草食動物由来の肉に多く含まれている。そこで、どのような飼養条件で生産された牛肉に多く含まれるのかを明らかにするため、供試牛29頭(表1)のロース芯について調査する。
また食肉店で一般的に国産牛肉と表示されるホル肥育牛、和牛肉の黒毛肥育牛、およびミンチなど加工仕向けになる場合が多い経産雌肥育牛、これら3グループを対象にしてカルニチン含有量を霜降りや肉色など見た目による判断の可能性について検討する。
成果の内容・特徴
- 牛ロース芯における総カルニチン含量は月齢の進んだ牛で高くなり、経産雌肥育牛では172.1mg/100gと極めて高い値となる(図1)。ヒトで推奨される1日当たりのカルニチン摂取量は約100mgといわれており、この肉であれば60g程度で賄えることとなる。
- カルニチンは幼牛よりも成牛の肉に多く含まれる。家畜の成長判定には乳歯から永久歯への生え替わりが基準となる場合が多いが、ウシでは18~24ヵ月齢から始まり、42~48ヵ月齢で終了するといわれている(図2)。
- 表1の供試牛の中で一般に流通しているホル肥育牛、黒毛肥育牛、経産雌肥育牛の3グループにおいて、霜降りと逆相関のある水分含量と、総カルニチン含量との間の相関は認められない(図3)。出荷月齢の異なる牛肉が流通している現状では、霜降りの有無でカルニチン含量を判定することは困難である。
- 肉色素(ヘマチン)含量と総カルニチン含量との相関は、経産雌肥育牛が若齢肥育牛と比較して両項目とも高い値を示すことから、全体的には正の相関が認められる(図4)。しかし、それぞれの牛群内の相関は認められず、出荷月齢の違いが小さい場合には、肉色でカルニチン含量を判定することは困難である。
成果の活用面・留意点
- 牛肉中カルニチン含量の推定手段として、肉牛の月齢情報を提供するトレーサビリティシステムの新たな活用法が提案できる。
- 月齢に伴うカルニチンの上昇は主に遊離型の上昇に起因するものである。
- 図2の多項式は8歳程度までの肉用牛で作成したものであり、該当しない牛(8歳以上の牛など)に外挿することは困難である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:脂質代謝や運動機能を促進する機能性成分の量に影響する要因の解明
- 課題ID:07-07-04-*-07-04
- 予算区分:交付金プロ「高品質赤肉生産」
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:常石英作、柴 伸弥、松崎正敏、森 弘(宮崎畜試)、垂水啓二郎(宮崎畜試)
- 発表論文等:常石ら(2005)肉用牛研究会報 78:50-52.