赤米に含まれるプロアントシアニジンの簡易な測定法

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要約

赤米に含まれているプロアントシアニジンの量は、赤米粉砕物に直接メタノール、バニリン、硫酸を加え呈色させ、分光光度計で吸光度を測定するのみで測定可能である。抽出、乾固、再溶解の操作が不要なため、測定時間が短縮でき、スクリーニング法として優れている。

  • キーワード:イネ、赤米、プロアントシアニジン、簡易測定
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・食品機能開発研究室、作物機能開発部上席研究官
  • 連絡先:電話096-242-7873、電子メールteruo@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・流通加工、水田作、作物・稲
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

赤米には抗酸化成分プロアントシアニジンを含むものが存在する。プロアントシアニジンは、抗酸化作用、血糖値上昇抑制作用などを有するとして近年注目されている機能性成分である。消費者・実需者の健康志向が高まる中、米の付加価値を高め、新しい需要を呼び起こす機能性成分として有望である。
プロアントシアニジンをターゲットとした新しい高付加価値形質米の育種を行う場合には、多数の系統について評価する必要があり、効率的な手法の開発・改良が望まれている。そこで、赤米のプロアントシアニジンを簡易・迅速に測定する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 赤米にはプロアントシアニジンが含まれており、赤米粉砕物の70%アセトン/0.5%酢酸抽出液からアセトンを除去した後、メタノールに再溶解し、発色試薬(バニリン/硫酸)を加えれば、その溶液は赤色に呈色する(従来法)。呈色の度合いは、品種・系統により異なっており(図1)、プロアントシアニジンの量に比例して強くなる。玄米の外観色調とは相関しない。
  • 図2に示すような簡便法の手順に従っても、反応液は赤色に呈色する(図1)。複雑な操作手順はなく、赤米の粉砕物に直接、1%バニリン/メタノール溶液と25%硫酸/メタノール溶液を加えるのみで良い。この段階でも、プロアントシアニジン量の多少は肉眼的に評価できる。
  • 簡便法における赤色の呈色度を数値化したい場合には、図2に示すように、反応液の遠心分離上清を回収し、分光光度計を用いて500nmの吸光度を測定すれば良い。簡便法における500nmでの吸光度と、従来法における定量値(マイクロプレートを用いて測定)との相関性は高い(r=0.95)(図3)。また、単量体であるカテキンを標準物質に用いれば、簡便法でも定量可能である(図4)。
  • 簡便法においては、抽出、乾固、再溶解の操作が不要であり、測定時間が短縮される。粉砕から測定完了までの所要時間は、20サンプルの場合、従来法で約36時間であるが、簡便法では約9時間である。

成果の活用面・留意点

  • 育種の一次スクリーニング法として利用できる。
  • 試料の粉砕の程度により、測定値にばらつきが生じる場合がある。粉砕の条件を一定にし、十分細かくしておく必要がある(図2に示した粉砕条件が望ましい)。
  • 赤米に含まれるプロアントシアニジン含量は、年次、栽培条件、乾燥条件などによって異なる。
  • 他のプロアントシアニジン含有農作物(ソバ、ソルガム、茶大豆等)への適用については、従来法との相関性を調べる必要がある。

具体的データ

図1.赤米に含まれるプロアントシアニジン の発色試薬(バニリン/硫酸)による呈色 図3.簡便法における吸光度(500nm)と従 来法における定量値との相関

 

図2.プロアントシアニジン量を測定するた めの簡便法の操作手順 図4.簡便法におけるプロアントシアニジン 定量値(カテキン相当量)と従来法における 定量値との相関

その他

  • 研究課題名:米の新規機能性の探索とその視覚的評価技術の開発
  • 課題ID:07-07-03-01-21-04
  • 予算区分:ブラニチ5系(稲)
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:菅原晃美、沖 智之、西場洋一、須田郁夫、小林美緒、永井沙樹、佐藤哲生