トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)の感染性クローンを利用した接種法
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要約
トマトの抵抗性検定などで利用可能な容易かつ確実な接種法として、トマト黄化葉巻ウイルスの感染性クローンを用いた接種法を開発した。
- キーワード:トマト黄化葉巻病、TYLCV、感染性クローン
- 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・病害遺伝子制御研究室
- 連絡先:電話096-242-7730、電子メールsued@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
トマト黄化葉巻病の病原ウイルスTYLCVは、トマトの促成栽培で大きな被害を与えている。日本人の嗜好にかなうトマトのTYLCV抵抗性品種は存在しないため、抵抗性品種育種への期待が高まっている。しかし、TYLCVは機械的接種では植物に感染しないことから、媒介昆虫による虫媒接種あるいは罹病株を穂木とする接ぎ木接種のどちらかに頼らざるを得ない。ところが、虫媒接種法は保毒虫の厳重な管理、接ぎ木接種法は穂木に適した多数の感染株の準備を必要とし、そのため、多くの検体を対象とした抵抗性検定などで利用可能な容易かつ確実な接種法が求められている。
成果の内容・特徴
- 静岡県焼津市由来のトマト黄化葉巻病罹病トマト株より、TYLCV ゲノムをPCR法で増幅し、バイナリーベクターpBI101へウイルスゲノムが2量体化する形で導入することによって、TYLCV-Mld[SzY](静岡株)の感染性クローンpBSzYを構築できる(図1)。
- アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens LBA4404)をpBSzYで形質転換し、培養液をマイクロインジェクション法で植物へ直接注入接種すると(表1)、2、3週間後からNicotiana benthamiana やトマトの新葉にTYLCVによる葉巻症状が発現する(図2)。
- pBSzYは、トマトやNicotiana benthamiana の他 N.tabacum cv. Xanthi-nc、N. glutinosa に対して感染性を有する。
- pBSzY由来の子孫ウイルスは、接ぎ木伝搬及びシルバーリーフコナジラミによる虫媒伝搬による感染性を有する。
成果の活用面・留意点
- pBSzYを用いて、抵抗性育種素材選抜のための接種検定試験の簡便化が可能である。
- アグロバクテリウムを接種した植物体は、閉鎖系温室で実験を行う必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:トマト黄化葉巻病の防除に関する研究
- 課題ID:07-08-01-(01)-04-02
- 予算区分:侵入病害虫
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:上田重文、花田 薫、岩波 徹
- 発表論文等:Uedaら (2004) Three distinct groups of isolates of Tomato yellow leaf curl virus in Japan and
construction of infectious clone. J Gen Plant Pathol 70(4) :232-238