トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)分離株間の遺伝子型簡易診断・識別法
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要約
国内で既発生のTYLCV4分離株の遺伝子型を簡便に識別できるプライマーを用いたPCR法によって、トマト黄化葉巻病の診断とTYLCV遺伝子型の識別が1日でできる。
- キーワード:トマト黄化葉巻病、TYLCV、分離株、PCR、遺伝子型、診断
- 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・病害遺伝子制御研究室
- 連絡先:電話096-242-7730、電子メールsued@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
日本国内で発生するTYLCVには、長崎株、土佐株(以上TYLCV-イスラエル系統)、静岡株・愛知株(以上マイルド系統)の4つのTYLCV遺伝子型に分けられることが報告されている。しかし、各遺伝子型間のゲノム塩基配列の相同性が極めて高く、新しい分離株の同定には塩基配列の解読作業が必須であり、識別するためには高額な解析機器と2日以上の時間とコストが必要である。そこで、国内4遺伝子型分離株をPCRとアガロースゲル電気泳動法だけの作業で簡便に検定植物の陽・陰性診断と遺伝子型の識別を行える方法を考案する。
成果の内容・特徴
- イスラエル系統・マイルド系統間の配列の違いに基づいて設計した2種類のプライマーを用いてPCR反応に供試し、反応産物を3%アガロースゲルで電気泳動することで、長崎株-土佐株、静岡株-愛知株間の各7塩基対に相当するDNA分子量の違いをその移動度で識別できる(表1、表2、図1A, B, C)。
- 3種類のプライマーを同一チューブ内で混合しPCR反応に供試後電気泳動することで、イスラエル系統・マイルド系統の分離株遺伝子型の同時識別も可能である(図1D, E)。
- 2004年に新たに発生を確認した和歌山県日高町、広島県三原町、愛媛県津島町の各県初発生地及び高知県いの町のトマト株に感染したウイルス分離株を本方法で診断した結果、いずれも長崎株である(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本方法により、遺伝子型の識別が簡便になるため、疫学的な発生分布調査も極めて容易になる。
- 陽性コントロールとして用いる各TYLCV遺伝子型分離株の感染葉または抽出した核酸は、問い合わせに応じて分譲可能である。
具体的データ

その他
- 研究課題名:感染性クローンを用いて作出した弱毒ウイルスによるトマト黄化葉巻病防除技術の開発
- 課題ID:07-08-01-*-29-04
- 予算区分:生物機能
- 研究期間:2004~2008年度
- 研究担当者:上田重文、竹内繁治(高知農技セ)、岡林美恵(高知中央西農振セ)、岩波 徹
- 発表論文等:Uedaら Evidence for occurrence of a new Tomato yellow leaf curl virus in Japan and
its diagnosis using PCR (2005) J Gen Plant Pathol 71(4)