水稲品種「Taporuri」の2回刈り栽培における最適1回目刈り取り時期と窒素施肥法

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要約

水稲品種「Taporuri」は、飼料イネ品種・系統「モーれつ」および「西海飼253号」と比べ、2回刈り栽培適性がある。 「Taporuri」の2回刈り栽培では、穂揃期に1回目イネを刈り取り、1回目イネと2回目イネの両方に追肥することにより、多肥で 2700kg/10a程度、また標肥で2550kg/10a程度の極めて高い合計乾物収量が得られる。

  • キーワード:飼料イネ、乾物収量、2回刈り栽培、Taporuri
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・栽培生理研究室
  • 連絡先:電話0942-52-0670、電子メールnakanohr@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料イネ栽培では高乾物収量が求められる。台湾の品種「Taporuri」は、極めて高い乾物生産能力を有しているため飼料イネへの利用が期待されるが、極長稈であるため倒伏に弱い欠点がある。この問題を解決するためには、倒伏前の出穂期前後に1回刈り取り、再生イネを飼料イネの収穫適期とされる黄熟期に刈り取る2回刈り栽培を行うことが有効であると考えられる。そこで、本研究では「Taporuri」の2回刈り栽培適性を明らかにするとともに、「Taporuri」の2回刈り栽培において乾物多収を得るための、1回目刈り取り時期、総窒素施肥量、窒素追肥法が合計乾物収量に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 2回刈り栽培における「Taporuri」の合計乾物収量は、「モーれつ」、「西海飼253号」、「ヒノヒカリ」と比べ、それぞれ15%、15%、55%程度高い(図1)。
  • 2回刈り栽培における合計乾物収量は、1回刈り栽培と比べ、「Taporuri」では10%程度高いが、「モーれつ」および「西海飼253号」では同程度、「ヒノヒカリ」では10%程度低い(図1)。
  • 草丈が190cm程度になる「Taporuri」の倒伏程度は、1回刈り栽培では大きいが、2回刈り栽培では小さい(表1)。
  • 「Taporuri」の2回刈り栽培では、穂揃期に1回目イネを刈り取り、窒素追肥法を分施(1回目イネと2回目イ ネの両方に追肥)とすることにより、多肥(30kgN/10a)で2700kg/10a程度、また標肥(15kgN/10a)で2550kg/10a程度 の極めて高い合計乾物収量が得られる(表2、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 「Taporuri」は1980年に台湾の嘉義農業試験分所からジーンバンクへ導入された品種であり、国内農家の飼料イネ生産に利用可能である。
  • 「Taporuri」には脱粒性があり、穂揃期に刈り取る1回目イネでは脱粒しないが、黄熟期に刈り取る2回目イネでは脱粒する可能性がある。
  • 本研究では、1回目の刈り取りは湛水状態で手刈りした(地際から15cmの高さ)。1回目刈り取り時の収穫機械による切り株への踏圧と水管理については別途検討が必要である。
  • 「Taporuri」の2回刈り栽培(2550kg/10a程度)は、「西海飼253号」の1回刈り栽培 (1900kg/10a程度)と比べ、2回目刈り取り分の生産コスト(20,000円/10a程度)が余計に掛かるが、増収(650kg/10a程度)に なるため、収益が向上する(35円/kgで販売すると2,750円/10a程度の増収)。

具体的データ

表1 2回刈りと1回刈り栽培における飼料イネ品種・系統の生育関連形質

 

表2 1回目刈り取り時期、総窒素施肥量、窒素追肥法がTaporuriの合計乾物収量に及ぼす影響(2004年と2005年の平均値)

 

図1 2回刈り栽培と1回刈り栽培における飼料イネ品種の乾物収量

 

図2 1回目刈り取り時期、総窒素施肥量、窒素追肥法がTaporuriの合計乾物収量に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:暖地におけるホールクロップ用飼料イネ品種の多収栽培技術の開発
  • 課題ID:07-02-02-02-20-05
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:中野 洋、福嶌 陽、森田 敏、楠田 宰