飼料イネ新品種候補「タチアオバ」(旧系統名「西海飼253号」)の異なる作期における窒素施肥法

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要約

「タチアオバ」の黄熟期における乾物収量および推定TDN収量は、「ニシアオバ」および「ヒノヒカリ」と比べ、それぞれ10%程度 高い。また、早植え栽培・多肥・前半型窒素施肥法とすることにより、最も低収の普通期栽培・標肥・後半型窒素施肥法と比べ、それぞれ35%および25%程度高くなる。

  • キーワード:飼料イネ、乾物収量、西海飼253号
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・栽培生理研究室
  • 連絡先:電話0942-52-0670、電子メールnakanohr@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

九州沖縄農業研究センター水田作研究部稲育種研究室では、乾物多収で耐倒伏性のある飼料イネ新品種候補「タチアオバ」を育成した。 そこで、本研究では「タチアオバ」の乾物およびTDN多収栽培技術を開発するために、イタリアンライグラス後を想定した早植え栽培、またコムギおよびオオムギ後を想定した普通期栽培、総窒素施肥量、窒素施肥法が乾物および推定TDN収量に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「タチアオバ」は、「ニシアオバ」および「ヒノヒカリ」と比べ、推定TDNは大差なく、穂数は少ないが、黄熟期において1茎重が大きいため、乾物収量および推定TDN収量がそれぞれ10%程度高い(表1)。
  • 「タチアオバ」の黄熟期における乾物収量(以下、乾物収量)および推定TDN収量は、早植え栽培・多肥 (22.5kgN/10a)・前半型窒素施肥法とすることにより、最も低収の普通期栽培・標肥(15.0kgN/10a)・後半型窒素施肥法と比べ、それぞれ35%および25%程度高い(表1)。また、この条件においても「タチアオバ」の倒伏程度は極めて小さい。
  • 早植え栽培では普通期栽培と比べ、推定TDNは大差なく、穂数は少ないが1茎重が大きいため、乾物収量および推定TDN収量がそれぞれ20%および15%程度高い(表1、図1)。
  • 多肥および前半型窒素施肥法では、それぞれ標肥および中間型あるいは後半型窒素施肥法と比べ、1茎重は小さいが穂数が多いため乾物収量が高く、推定TDNが低いものの乾物収量の影響が大きく推定TDN収量も高い(表1、図2、図3)。
  • 「タチアオバ」の乾物収量は、穂揃期から黄熟期までの乾物増加量とよりも、穂揃期までの乾物増加量と正の相関が高い(表1)。したがって、早植え栽培は1茎重の増加を介して、また多肥および前半型窒素施肥法は穂数の増加を介して、それぞれの穂揃期の乾物重が大きくなり、その結果黄熟期における乾物収量が高くなる。

成果の活用面・留意点

  • 本研究は、地力の低い灰色低地土で行った。
  • 生産コストおよび環境負荷を考慮した総窒素施肥量については別途検討が必要である。

具体的データ

表1 西海飼い253号の乾物収量、乾物構成要素、生産関連形質

 

図1 作期が西海飼253号の乾物収量に及ぼす影響

 

図2 総窒素施肥量が西海飼253号の乾物収量に及ぼす影響

 

図3 窒素施肥法が西海飼253号の乾物収量に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:暖地におけるホールクロップ用飼料イネ品種の多収栽培技術の開発
  • 課題ID:07-02-02-02-20-05
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:中野 洋、福嶌 陽、森田 敏、楠田 宰、服部育男、佐藤健次