早播に適した小麦に対する子実タンパク質増加のための被覆尿素の施用法
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要約
灰色低地土で早播に適した小麦「イワイノダイチ」に対し、溶出期間が30日のリニア型とシグモイド型の被覆尿素を速効性肥料と組み合わせて全量基肥施用すると、収量は慣行と同等以上となり、子実タンパク質は増加し、うどんの食味も遜色なく、追肥作業を省略でき、省力的である。
- キーワード:コムギ、タンパク質、被覆尿素、イワイノダイチ、早播、灰色低地土
- 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・水田土壌管理研究室
- 連絡先:電話0942-52-0681、電子メールt2711@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)・水田作、共通基盤・土壌肥料
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
九州で栽培された小麦は他地域に比べ子実タンパク質含有率が低く、実需者の評価を落とす原因の1つとなっており、これを解決するため、主に、黒ボク土を対象として被覆尿素を速効性肥料と配合して施用する技術が提案されている。しかしながら、灰色低地土で梅雨入り前に収穫できる栽培期間の長い早播に適した小麦については検討されていない。そこで、追肥作業の省力化と収量を低下させることなく子実タンパク質の増加を図るため、溶出タイプの異なる被覆尿素肥料を速効性窒素肥料と組み合わせて全量を基肥として早播に適した小麦「イワイノダイチ」に施用し、収量・品質とうどんの食味に及ぼす影響を検討する。
成果の内容・特徴
- リニア型30日溶出タイプの被覆尿素は主に基肥および分げつ肥の役割をし、積算窒素溶出率が50∼60%となる1月中旬以降は緩やかに溶出して収穫期まで溶出が持続し、最終的には80∼90%となる(図1)。これに対し、シグモイド型30日溶出タイプでは、2月中旬以降から溶出が多くなり、穂肥および実肥の役割を果たし、収穫期には積算溶出率が90%程度となる(図1)。
- 速効性窒素肥料に30日溶出タイプの異なる被覆尿素を窒素分で55∼77%組み合わせて配合し全量基肥施用して、施用合計窒素量を慣行施肥と同等あるいは2kg/10a増肥すると、慣行施肥に比較して小麦収量は同等以上であり、小麦の子実タンパク質含有率は上昇する(表1、表2)。なお、出穂期の遅れはないが、収穫期は同程度か倒伏が見られた場合に数日程度遅れることがある。また、追肥作業を省略することができ、省力的である。
- リニア型30日溶出の被覆尿素の施用量が8kg/10aやシグモイド型30日溶出の被覆尿素が4kg/10aと多い
場合は粉色が悪く、うどんの食味官能性の合計点数が低い。これに対し、リニア型30日溶出の被覆尿素が4∼6kg/10aで、シグモイド型30日溶出の被覆尿素が2kg/10aと少ない場合は、慣行施肥の場合と遜色ないうどんの食味官能性を示す(表3)。
- 収量、子実タンパク質含有率、うどんの食味官能性から総合的に判断すると、灰色低 地土において11月前半播種の小
麦「イワイノダイチ」には速効性窒素肥料3∼5kg/10a、溶出期間が30日のリニア型被覆尿素4∼6kg/10aとシグモイド型被覆尿素2kg
/10aを組み 合わせて11∼13kg/10a全量基肥施用するのが良い。
成果の活用面・留意点
- 小麦の追肥作業を省略し、収量を低下させることなく省力的に子実タンパク質を増加させたい場合に活用できる。
- 被覆尿素を全量基肥施用することにより、肥料代は慣行の1.3∼1.4倍になるが、2∼3回の追肥作業を省略でき、追肥の労働費を考慮すると、コスト的に見合う。
- 本成果は灰色低地土において11月前半播種の小麦「イワイノダイチ」を対象とする。
具体的データ




その他
- 研究課題名:暖地小麦の高品質化のための施肥管理技術の開発
- 課題ID:07-02-03-02-26-05
- 予算区分:委託プロ(ブラニチ1系)
- 研究期間:2003∼2005年度(平成15∼17年度)
- 研究担当者:土屋一成、原嘉隆、草佳那子、中野恵子