太陽熱処理を活用した早出しカンショ・露地野菜の高収益畑輪作体系

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要約

夏季に太陽熱処理を行ってキャベツ、ダイコン、青果カンショを早出しする3年一巡の畑輪作体系によると、除草剤や殺線虫剤の使用量を削減でき、経営規模を3haとした場合、週40時間以内の労働で約650万円の農業所得が見込まれる。

  • キーワード:輪作体系、サツマイモ、露地野菜、早出し、トンネル栽培、太陽熱処理
  • 担当:九州沖縄農研・畑作研究部・畑作総合研究チーム、作業システム研究室、生産管理研究室、上席研究官、総合研究部・経営管理研究室、動向解析研究室
  • 連絡先:電話0986-24-4279、電子メールkootsuka@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

南九州畑作地帯では、加工カンショやサトイモ・加工ダイコンといった夏作物主体の野菜・畑作経営が多いが、所得向上を図るために新たな高収益作物の導入が切望されている。南九州は冬季でも温暖であり、青果カンショはもとよりキャベツ等の露地野菜をトンネル栽培して「早出し」できそうであり、これら新規作物を導入した冬作主体型の輪作体系を組めれば、所得向上はもとより、冬春季における野菜・畑作物の安定供給にも貢献できる。
そこで、省力トンネル栽培技術、機械・資材の汎用・共通利用技術、農薬に頼らない環境保全的土壌管理技術等の諸技術を新開発し、これら技術を組入れた冬作主体型の環境保全的畑輪作技術体系を創出する。

成果の内容・特徴

  • 南九州畑作地帯では、夏季に太陽熱処理を行い、キャベツ、ダイコン、青果カンショを早出しする3ha(年2作延6ha)規模の環境保全的畑輪作体系を組める(図1)。
  • この畑輪作体系には、太陽熱処理技術(石灰及び堆肥散布を行った後、後述のM字畝立て・全面マルチを行って、雑草及 び線虫防除を行う技術:別様平成17年度研究成果情報)、カンショ及び露地野菜並びに太陽熱処理に共通して使え、機械・資材の低コスト化を可能にした施肥 同時M字畝立て(播種)マルチ技術、乗用管理機等の手持ちの機械を汎用利用してトンネルを省力低コストに敷設する技術(平成15年度研究成果情報)等の環 境保全的で省力低コストな新開発技術が組込まれている(表1)。
  • この畑輪作体系では、作物切替時等の作業競合による労働過重が発生しにくく、年間を通してどの週も、1人当たり40時間以内の労働時間で輪作できる(図2)。
  • この早出し輪作体系を組むことにより、慣行(加工カンショ-加工ダイコンを主産物とする経営規模約5ha、主従事者 2人の家族経営農家)の約420万円に対して、市場出荷(都城市場)した場合に約600万円の年次平均所得が見込まれ、更に、ダイコンと青果カンショを契約栽培して調整・箱詰めせずに出荷した場合には、2001年の暖冬による所得の極度の落込みをカバーでき、農業所得も約650万円に上昇する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本輪作技術体系は、南九州等の夏季高温・冬季温暖な地域に特に有効である。
  • 輪作期間内に太陽熱処理効果が薄れることもあるので、線虫密度の推移をみて適宜土壌消毒を行う必要がある。
  • キャベツの定植は太陽熱処理した畝をそのまま利用するので、株元潅水が必要である。
  • 農業所得額(慣行を除く)は、当地域の市場価格及び契約出荷価格を基に線形計画法を用いて推計した結果であり、どの地域にも当てはまるものではない。

具体的データ

    図1 太陽熱処理を組入れたカンショ・露地野菜の早出し畑輪作体系

 

  表1 早出し輪作体系(図1)に組込まれている主要な要素技術と作業時間

 

図2 早出し輪作体系(図1)における週別労働時間

 

図3 早出し輪作体系(経営規模:3a)における農業所得

 

その他

  • 研究課題名:共通化・汎用化技術に基いた軽労畑輪作技術の現地実証
  • 課題ID:07-01-06-02-04-05
  • 予算区分:交付金(地域総合)
  • 研究期間:2001∼2005年度
  • 研究担当者:大塚寛治、久保田哲史、石井孝典、新美 洋、杉本光穂、持田秀之(東北農研セ)、安達克樹、小林 透、倉知哲朗、田口善勝、深見公一郎