少数胚培養における胚盤胞発生率改善のための個体識別アルギン酸カルシウム包埋法
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要約
体外受精後のウシ胚をアルギン酸カルシウムで包埋して採取個体別に識別し、複数個体由来少数胚を集合させて培養することにより、胚盤胞発生率が改善される。
- キーワード:家畜繁殖、ウシ、体外受精、胚盤胞、アルギン酸カルシウム包埋
- 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・繁殖技術研究室
- 連絡先:電話096-242-7746、電子メールkobashu@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・畜産草地(大家畜)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
近年、生体および食肉処理場由来の卵子を用いた体外受精により、優秀な後継牛作出のための胚生産が行われている。体外受精胚由来産子を血統登録する場合には、採取由来を区別した個体別の胚生産のための培養方法が必須となるが、個体別に卵子採取、体外受精・培養する場合、1個体から得られる卵子数が少ないため、胚盤胞発生率が低くなる傾向がある。これは、胚自身から分泌される胚発育促進因子の濃度等が原因といわれている。解決法として、他の胚と一緒に培養して多数胚培養とすることで発生率が改善されるが、個体毎の胚の識別が必要になる。
そこで、アルギン酸カルシウムで個体別に胚を包埋、個体識別し、一つの培養液中に複数個体分の包埋を導入して多数胚培養と同等の培養条件(培養個数)とすることで、胚盤胞発生率を改善することを目的とする。
成果の内容・特徴
- 通常の培養方法では、培養液への導入胚数が少なくなると胚盤胞への発生率が低くなる(表1)。
- 体外受精終了後の胚を簡易に包埋し、個体識別する方法である。1)体外受精終了後の胚を1%アルギン酸ナトリウム加
リンゲル溶液へキャピラリーピペット等で移す。2)胚とアルギン酸ナトリウム溶液を、0.1%塩化カルシウム加リンゲル溶液に移す。この際、包埋毎に異な
る数のガラスビーズを吸い取り、包埋し、個体識別する。3)キャピラリーピペットを塩化カルシウム溶液中に静かに吹き出すことで、溶液中でアルギン酸カルシウムに変化し、胚およびガラスビーズを包埋する。
- 材料が安価であり、手法も簡便である。
- 胚を個体毎に5個ずつ包埋して4個体分の包埋を1つの培養液で培養することにより(5個胚×4包埋区)、1個体のみでの培養時(5個のみ培養)より有意に高い胚盤胞発生率を示す(図1、表2)。
- 培養途中で胚が包埋から脱出することがあるため、5日齢の時点で各包埋および培養胚を個体別に分離して培養する必要がある。その際、各個体が少数胚培養となるが、5日齢以降は培養個数が1個でも多数でも培養成績は変わらない(表3)。
- 以上の試験は、食肉処理場由来卵巣より吸引採取した卵子を供試した。
成果の活用面・留意点
- 採取卵子が少数の際の胚盤胞発生率を改善出来る。
- 本培養法を用いることで、登録可能な体外受精由来産子の生産効率を高めることが出来る。
具体的データ




その他
- 研究課題名:ウシ胚の効率的分離切断および培養法の利用による一卵性多子生産技術の開発
- 課題ID:07-04-05-*-13-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2002∼2005年度
- 研究担当者:小林修司、阪谷美樹、高橋昌志