促成イチゴの花芽分化促進のための紙ポット育苗

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要約

促成イチゴの育苗にパルプモウルド製の紙ポットを用いると、培地温が低下し、頂花房の花芽分化が促進される。「さちのか」では育苗用土を用い、2週間に1回施肥(N:100mg/錠)し、2時間に1回(10分)頭上散水することで、10日程度早くなる。

  • キーワード:イチゴ、育苗、紙ポット、かん水、培地温、花芽分化
  • 担当:九州沖縄農研・野菜花き研究部・施設野菜栽培研究室
  • 連絡先:電話0942-43-8364、電子メールyochan@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

イチゴは低温、短日、低窒素条件下で花芽分化が促進される。パルプモウルドの紙ポットには透水性があり、ポット表面からの水の蒸発により培地が冷却されるため、イチゴ苗の花芽分化促進が期待できる.そこで、水の蒸発に影響を及ぼすかん水方法や培地資材ならびに苗の窒素状態に関係する施肥量等について検討し、花芽分化促進に効果的な紙ポット育苗条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 促成イチゴの育苗にパルプモウルド製の紙ポットを用いると、ポット内地温は慣行のポリポットより大きく低下し、花芽分化が促進される。かん水方法では頭上散水が底面給水より地温の低下が大きく、花芽分化も早い(図1、表1)。
  • 頭上散水では、散水頻度が高いほど地温の低下が大きいが、「さちのか」では2時間に1回の頭上散水で花芽分化が最も促進され、慣行のポリポットによる育苗に対して10日程度早くなる(図2、表1)。
  • 底面給水では、ビニルフィルムより給水マットの上に紙ポットを並べる方が、地温の低下は大きく、花芽分化も早い(図2、表1)。
  • 紙ポット育苗では、早くから育苗を開始すると花芽分化が早い。また、水はけの良い培地資材ほど花芽分化が早い。さらに、施肥頻度が高いほど花芽分化が早い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 紙ポット育苗は「とよのか」や「濃姫」等、他の促成イチゴ品種の花芽分化促進にも効果的である。また、ポットのまま定植可能で、定植後のポットの回収や洗浄作業が不要なので省力的である。
  • ベンチ育苗を行えば、紙ポットの過度な分解が抑制されるとともに、地温低下が一層促進される。さらに、プラスチックトレイに並べて育苗することにより、苗の移動や葉かき等の作業による紙ポットの破損が少なくなる。
  • 定植時までに紙ポットの分解が不十分な場合は、ポットと植え穴に十分かん水して分解を促進し、活着を図る必要がある。

具体的データ

表1 かん水方法が紙ポット育苗イチゴの花芽分化に及ぼす影響

 

図1 紙ポット育苗におけるかん水方法と散水頻度がポット内地温に及ぼす影響

 

図2 紙ポット育苗における散水頻度と底面給水方法がポット内地温に及ぼす影響

 

表2 紙ポット育苗時の条件がイチゴの花芽分化に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:蒸発潜熱を利用した紙ポット育苗イチゴの花芽分化促進技術の開発
  • 課題ID:07-05-02-04-23-05
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2004∼2005年度
  • 研究担当者:荒木陽一、山口博隆、渡辺慎一、古谷茂貴、大石高也(大石産業)、坂口浩二(JAみなみ筑後)、松隈圭二(JAさが東部)、東卓弥(和歌山農試)