牛体熱収支法に基づく牛体内貯熱量を増加させない細霧送風法の最適条件

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要約

牛体熱収支に基づき牛体内貯熱変化量を増加させない方法として細霧送風法を適用した場合の環境条件は,気温33℃、相対湿度60%条件の時、牛体付近の風速2m/s、牛体表面積の約75%を細霧により濡らすことである。

  • キーワード:細霧冷房,暑熱対策,熱収支,牛舎,直腸温度
  • 担当:九州沖縄農研・環境資源研究部・気象特性研究室
  • 連絡先:電話096-242-7766、 電子メールkohba@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農研・生産環境(農業気象)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ホルスタイン種の乳量生産性は気温10℃前後で最も高くなり、これよりも高温域と低温域では低下する。さらに、近年では最高気温が35℃を超す酷暑も珍しくなく、その影響によりホルスタインの体調不良や死亡といったことが発生している。そのため、日本の多くの牛舎では送風や細霧冷房による暑熱対策を行っている。既往の研究では乳牛の体感温度や牛舎内環境について調査されているが、暑熱対策が牛体に与える影響を定量的に調査したものは 見あたらない。そこで、牛体の熱収支を用いて送風および細霧冷房が牛体に与える影響について調べ、最適な細霧送風の方法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 牛舎内で細霧を噴霧することで気温が下がり、低下する気温は細霧冷房開始時の相対湿度でおおむね決定される。牛体内貯熱量を増加させない方法は、細霧により牛体が濡れ、送風を当てることで牛体からの潜熱輸送量が増加し、牛体内にたまる熱量が減少し、暑熱環境を緩和できる(図1、図2)。
  • 牛体内貯熱量を増加させない場合、ホルスタイン種直腸温度の上昇は抑制することが可能である(図3)。
  • 細霧により牛体表面を約75%濡らした場合における牛体内貯熱量を増加させない牛舎内の気温および相対湿度別に対応した最適な送風の風速を求める図を作成した(図4)。
  • 例えば、牛体表面の約75%を細霧により濡らすと、気温33℃・相対湿度60%・送風2m/sの場合において、牛体貯熱量を増加させない最適条件である。

成果の活用面・留意点

  • 牛舎に暑熱対策設備を導入および運用する際に送風の強さ、細霧の噴霧方法(量および方向)において最も効率の良い条件設定をすることが可能となる。
  • 細霧量を増やしすぎた場合、湿度増加により暑熱対策効果が減少する。また牛床が濡れることで衛生上の問題も発生するため注意が必要である。
  • 図4は今回観測を行った牛舎のデータを基にシミュレーションしたものであるため、牛舎の構造などにより多少の相違が発生する。

具体的データ

図1 細霧冷房開始時の相対湿度による最大気温低下量

 

図2 細霧冷房の有無による貯熱変化量の違い

 

図3 細霧冷房の有無による直腸温度の推移の違い

 

図4 細霧により牛体の75%が濡れた場合に貯熱変化量がゼロとなる風速

 

注

 

その他

  • 研究課題名:地球温暖化に伴う乳用牛の暑熱環境ストレス指標作成
  • 課題ID:07-06-03-01-10-05
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:大場和彦・柳 博・丸山篤志・田中正仁・神谷裕子
  • 発表論文等:
    1)大場ら(2005):文部科学省科研費報告書、1-68.
    2)柳ら(2005):九州の農業気象,II輯14号,1-8