ダイズ作後に残される粗大残渣が後作コムギの窒素吸収に及ぼす影響

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要約

ダイズ作後は跡地土壌の可給態窒素の増加のために後作コムギの窒素供給量が増加する。ダイズ作後に残される粗大残渣から春先に窒素が放出されるが、後作コムギの窒素吸収に及ぼす影響はダイズ作後の跡地土壌の可給態窒素の増加による影響と比べて小さい。

  • キーワード:コムギ、ダイズ、輪作、窒素、残渣、落葉、土壌
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・水田土壌管理研究室
  • 連絡先:電話0942-52-0681、電子メールyshara@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

水田輪作体系にダイズ作を導入する際、後作コムギの倒伏が起こりやすく、窒素施肥量を減らす必要があることが知られているが、圃場毎の減肥量を的確に示す技術は確立されていない。この原因は、ダイズ作後に残される残渣の影響が詳しく評価されていないためと考えられる。そこで、ここで は、後作コムギに対するダイズ作後に圃場に残る粗大残渣(落葉・茎莢・根など、土壌に馴染んでいない0.5mm程度以上の部分)の影響を、土壌分析で把握できる跡地土壌(5mm篩別で残る微細残渣を含む)の影響と仕分けて評価する。

成果の内容・特徴

  • ダイズ作後のコムギの窒素吸収量はイネ作後に比べて1.0g/m2程度高く、ダイズ作後に残る粗大残渣の影響は小さい(図1)。
  • イネ作後に比べてダイズ作後では跡地土壌の可給態窒素が多く、ダイズ作後に残される粗大残渣の影響が小さくても、ダイズ作後のコムギの窒素吸収量が高まることを説明できる(図2)。
  • ダイズ残渣を土壌に埋めると、コムギ作当初、窒素の有機化がおき、コムギによって利用されにくくなるが、3月以降、窒素は無機化される(図3)。また、ダイズ残渣に含まれる約半分の窒素はコムギ作期間中に無機化されない。
  • ダイズ作の跡地土壌による後作コムギへの影響に比べて、ダイズ残渣の鋤込みの影響は小さいが、窒素供給が少ない条件では残渣の鋤込みによって成熟期のコムギの窒素含有率が上昇し、コムギ生育後半に残渣から窒素が放出されると解釈される(図4)。

成果の活用面・留意点

  • ダイズ残渣の分解は温度や耕起等の圃場管理で変わる可能性があるため、窒素有機化の程度や無機化に転じる時期がこれらに影響を若干受ける可能性がある。
  • 本成果は、灰色低地土の圃場で得られた。

具体的データ

図1 コムギの窒素吸収量に対する前作と残渣の影響

 

図2 夏作前後における土壌の加給態窒素量

 

残渣由来の窒素における可溶性割合の推移

 

 

図4 コムギの窒素吸収に対する残渣量の影響

 

その他

  • 研究課題名:代かき同時土中点播栽培における省力施肥管理技術の開発
  • 課題ID:07-02-08-01-01-03
  • 予算区分:交付金プロ(直播稲作型)
  • 研究期間:2001∼2003年度
  • 研究担当者:原嘉隆、土屋一成、草佳那子、森田弘彦、吉永悟志、山下 浩、古畑昌巳
  • 発表論文等:原ら(2005) 土肥誌 76(3):285-291.