北部九州における水田作農家の水田規模別・経営組織別動向の予測

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要約

予測年(2010年)に北部九州5県では、大・中規模の水田作農家の水田面積シェアが増加するものの、両者を合わせた面積シェアは最大でも30%程度と見込まれる。また、経営組織では、大規模農家において経営複合化が進行すると予測される。

  • キーワード:動向予測、北部九州、水田作、イネ、水田規模、経営組織、複合化
  • 担当:九州沖縄農研・総合研究部・動向解析研究室
  • 連絡先:電話096-242-7694、電子メールkurachi@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・農業経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

水田農業の変革を目指した米政策改革が始まり、市町村が策定した地域水田農業ビジョンでは集落営農の担い手像とともに個別経営展開 に期待する動きもみられる。本情報では、農業センサス農家調査票(1995年、2000年)を基に2010年における北部九州水田作農家(経営水田のある 農家)の水田規模別・経営組織別動向をマルコフ分析により県別に明らかにし、個別経営の展開方向を予測する。

成果の内容・特徴

  • 北部九州全体で、2000∼2010年までの10年間に、水田作農家数は20.2%減少し、経営水田面積は11.4%減少すると予測される(表1)。水田規模別農家数では、福岡・佐賀・大分は農家数増減分岐規模が現状の3∼4ha階層から2005∼2010年には、より上位の4∼5ha階層へ移動する。これに対して、熊本・長崎は現状の3∼4ha階層にとどまる(図1)。
  • 2010年には、大規模農家(経営水田面積5ha以上)、中規模農家(同3∼5ha)とも、農家数シェア、面積シェ アは増加する。大規模農家と中規模農家の面積シェアの関係は、県間で差異があり、福岡・大分は大規模農家のシェアが大きく、逆に熊本は中規模農家のシェア が大きい。佐賀は大・中規模農家とも同程度のシェアである。しかし、大規模と中規模を合わせた面積シェアは、2010年時点で九州の代表的な米生産県であ る福岡・佐賀においても約25∼30%を占めるにすぎない(図2)。
  • 上記の水田規模別予測値の安定性を確認するために、1995∼2000年の農家移動の推移確率を基に推計した予測値 を一つ前の期間(1990∼1995年)の推移確率を基に推計した予測値と比較すると、大分は大規模化がより加速化しているが、他県は同様の傾向を示し、 予測値は安定している(図2)。
  • 大規模農家は、2010年には各県とも単一経営(稲1位)の農家数シェアが減少し、複合化の進行が予測される。複合 経営の経営組織別構成では、佐賀が稲作を1位部門とする、準単一複合経営+複合経営のシェアが最も大きく、熊本は稲作を2位部門とする準単一複合経営の シェアが大きいという特徴がある(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 水田作農家の水田規模別・経営組織別予測結果は、米政策の担当者が担い手育成の参考として活用できる。
  • 予測に使用した農業センサス農家調査票は1995年、2000年データであり、予測値は、この期間の農家移動の推移確率を基に推計している。
  • 農業センサス農家調査票による分析は、「農林業センサスの調査票の使用について」(総統審278号)に基づき総務省より使用許可を受けている。

具体的データ

表1 水田農家数及び経営水田面積の予測

 

図1 農家数増減分岐規模の推移

 

図2 大・中規模農家の農家数シェア及び水田面積シェアの動向

 

図3 大規模農家の経営組織別農家数シェアの動向

 

その他

  • 研究課題名:九州・沖縄地域における農業の担い手の動向予測
  • 課題ID:07-01-01-01-02-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:倉知哲朗、田口善勝