高でん粉で醸造適性が優れる焼酎用カンショ新品種「ときまさり」(旧系統名 九州135号)

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要約

カンショ「ときまさり」は原料当たりの純アルコール収得量が「コガネセンガン」より多く、焼酎は軽快な甘味とコク、いもの香りが強い特徴のある酒質である。サツマイモネコブ線虫抵抗性が優れ、でん粉歩留が高く、いもの貯蔵性も良好である。

  • キーワード:サツマイモ、焼酎用、高でん粉、線虫抵抗性、醸造適性、貯蔵性
  • 担当:九州沖縄農研・サツマイモ育種研究チーム
  • 連絡先:電話0986-24-4274、電子メールsatsumaimo-team-mykz@gp.affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

焼酎用の主力品種である「コガネセンガン」は、その焼酎の独特のいもの香りや甘みが実需者から高く評価されているが、焼酎需要を維持・拡大するため、酒質の多様化を図る動きがあり、実需者からは「コガネセンガン」と酒質が異なる個性的な焼酎に適する品種への期待が高まっている。また、コガネセンガンはいもの貯蔵性が悪く、線虫にも弱いため、原料の安定供給という面から問題が指摘されている。こうした要望に応えるため、いもの貯蔵性や線虫抵抗性に優れた醸造適性の高い品種を育成する

成果の内容・特徴

  • 「ときまさり」は平成7年に、ともに高でん粉・多収の「九州111号」(母)と「 コナホマレ」(父)を交配し選抜した系統である。
  • 醸造時の原料当たり純アルコール収得量が高い。焼酎の官能評価は高く、いもの香りが強く、軽快な甘みとコクを特徴とする焼酎ができる(表1)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は「やや強」で「コガネセンガン」より優れる。ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は「中」で「コガネセンガン」並みである(表2)。
  • 標準無マルチ栽培での上いも重は「コガネセンガン」並みであるが、長期透明マルチ栽培では「コガネセンガン」より1割程度多収である(表3)。
  • いずれの栽培条件でもでん粉歩留は「コガネセンガン」より1から2ポイント程度高い(表3)。
  • 貯蔵性は「やや易」で「コガネセンガン」より優れる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 宮崎県北郷町で普及に移される予定である(普及見込み面積20ha)。
  • 黒斑病抵抗性が「やや弱」であるので、同病害の多発地帯では防除に努める。
  • 低収のため早掘栽培には適さない。
  • ネコブセンチュウ抵抗性はSP1レースが優先の試験圃場での結果である。

具体的データ

表1 焼酎醸造特性

表2 いもの特性、病虫害抵抗性および貯蔵性

表3 育成地および宮崎県(北郷町)における収量性

図1 ときまさりの塊根

その他

  • 研究課題名:良食味で加工適性に優れた甘しょ品種の育成と新たな有用特性を持つ甘しょ育種素材・系統の開発
  • 課題ID:311-e
  • 予算区分:交付金、基盤、加工プロ
  • 研究期間:1996~2006年度
  • 研究担当者:吉永 優、片山健二、熊谷 亨、甲斐由美、境 哲文、石黒浩二、中澤芳則、山川 理