カンショ焼酎粕の固液分離液のパン製造への利用

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要約

水代わりにカンショ焼酎粕の固液分離液を使用したパンは、クエン酸、γ-アミノ酪酸等機能性成分を含有しており、従来のパンに比べて美味しく、栄養性および機能性に優れている。

  • キーワード:サツマイモ、焼酎粕、パン製造、機能性
  • 担当:九州沖縄農研・機能性利用研究チーム
  • 連絡先:電話 096-242-7873、電子メールmak825@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・流通加工、九州沖縄農業・畑作、共通基盤・バイオマス
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

焼酎の消費量の増加に伴い、企業における収益性の向上及び環境負荷軽減の観点から、焼酎粕の高付加価値利用が求められている。カンショ焼酎粕の栄養成分や機能性を活かして、製パン時における水の代わりに焼酎粕固液分離液を添加することにより、栄養性や機能性に優れたパンを製造する。

成果の内容・特徴

  • コガネセンガン(可食部が黄色)およびムラサキマサリ(可食部が紫)焼酎粕固液分離液を水代わりに添加することにより黄色や紫のパンが製造でき(表1)、膨らみも無添加パンと差異がない。
  • 焼酎粕固液分離液を添加したパン(小麦粉(g):焼酎粕固液分離液または水(ml):ドライイースト(g)=100:75:1)では液部の成分を反映して、無添加パンに比べてミネラル類、ビタミン類の含量が高い傾向を示す。特にクエン酸、γ-アミノ酪酸(GABA)、カリウム含量が顕著に高い(表1)。焼酎粕固液分離液を添加したパンでは、無添加パンに比べて、ムラサキマサリ焼酎粕固液分離液パンは総ポリフェノール約6倍、DPPHラジカル消去能約22倍、コガネセンガン焼酎粕固液分離液パンは総ポリフェノール約4倍、DPPHラジカル消去能約13倍と高い値を示す(図1)。
  • パンの官能評価では,香りと味は、コガネセンガン焼酎粕固液分離液パンがよく、色はムラサキマサリ焼酎粕固液分離液パンがよい。総合評価では焼酎粕固液分離液パンは無添加パンより高い(図2)。
  • 焼酎粕固液分離液を添加したパンは、無添加パンに比べて貯蔵日数の経過とともに老化が遅延される(図3)。
  • 焼酎粕固液分離液を添加したパンは5種類のビフィズス菌、Bifidobacterium(B.) adolescentisB. bifidumB. breveB.infantisB. longumのうち、B. breveの増殖を促進する(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • この成果は製パン、製菓および製粉メーカーで利用できる。
  • 固液分離液は常圧蒸留した焼酎粕から得られたもので、パンの成分含量は焼酎粕原料(カンショ品種、焼酎製造法等)およびパンの製造法により変化する。

具体的データ

表1 カンショ焼酎粕の固液分離液を添加したパンの成分含量

図1 カンショ焼酎粕の固液分離液添加パンのポリフェノール含量とDPPH

図2 カンショ焼酎粕の固液分離液添加パンの官能評価

図3 カンショ焼酎粕の固液分離液を添加したパンの老化遅延

その他

  • 研究課題名:暖地における畑作物加工残さ等地域バイオマスのカスケード利用・地域循環システムの開発
  • 課題ID:411-d
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:吉元誠、倉田理恵、章超(霧島酒造)、奥野博紀(霧島酒造)、高瀬 良和(霧島酒造)
  • 発表論文等:甘藷焼酎蒸留粕液部を使用したパン類及びその製造法、特願2006-063434、出願日平成18.3.9