稲発酵粗飼料に混入した非硬実の水田雑草種子はサイレージ発酵で死滅する

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

稲発酵粗飼料に混入したヒメタイヌビエ、アメリカセンダングサなどの非硬実の主要水田雑草種子は、90日~180日間のサイレージ発酵で死滅する。硬実のクサネム種子はサイレージ発酵や乳牛第1胃内の滞留では死滅しない。

  • キーワード:飼料イネ、稲発酵粗飼料、水田雑草種子、サイレージ発酵、乳牛第1胃、硬実
  • 担当:九州沖縄農研・イネ発酵TMR研究チーム
  • 連絡先:電話0942-52-0675、電子メールkoarai@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、共通基盤・作付体系・雑草、総合研究(飼料イネ)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

食用イネ栽培での雑草発生は米の減収に直結するが、飼料イネ栽培では稲発酵粗飼料(以下、イネWCS)に混入した雑草は飼料として活用されるため、イネWCS内に水田雑草を混入して収穫する場合が散見される。しかし、イネWCSへの雑草の混入は、同時に雑草種子も混入するため、水田への牛糞堆肥の施用により雑草の発生拡大が懸念される。そこで、イネWCSへの混入が雑草種子の生存に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • イネWCS(含水率:52.8%、V-SCORE:95点(発酵32日))に混入した水田雑草ヒメタイヌビエおよびアメリカセンダングサの種子は、サイレージ発酵にともなって、それぞれ約180日および90日でほとんど死滅する。これら草種の風乾貯蔵種子は、乳牛の第1胃内の48時間の滞留によって完全に死滅することはないが、サイレージ発酵で生存した雑草種子は、その後の乳牛第1胃内の48時間の滞留によって死滅する(図1)。
  • 水田雑草イヌホタルイ、コナギ、タマガヤツリ、タカサブロウの種子は、アメリカセンダングサと同様にサイレージ発酵の進行にともなって、約90日でほとんど死滅する(図2)。
  • 水田雑草クサネム種子は、サイレージ発酵および乳牛第1胃内の48時間の滞留ではほとんど死滅しない。一部死滅した種子は非硬実種子であり、種皮が水を通さない硬実のクサネム種子はイネWCS内で生存する。種子の硬実・非硬実は、サイレージ発酵や乳牛第1胃内の滞留によって変化しない(図1、図2、表1)。

成果の活用面・留意点

  • 飼料イネ栽培における雑草防除の基礎的な知見となる。
  • 飼料イネ栽培にあたってはイネWCSへの雑草の混入を避ける栽培・収穫管理に努めることが原則である。
  • 本成果はドラム缶およびパウチサイレージ試験法により、室内で発酵させた発酵品質は極めて良好なサイレージでの結果による。
  • 乳牛第1胃内の滞留は、フィステル装着ホルスタイン雌牛を用い、ナイロンバック法で滞留させた。

具体的データ

図1 イネWCS内でのサイレージ発酵およびその後の乳牛第1胃内の滞留が水田雑草種子の生存に与える影響

図2 イネWCS内でのサイレージ発酵が水田雑草種子の生存に与える影響

表1 イネWCS内でサイレージ発酵したクサネム種子の種皮の状態と生存率

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:ブラニチ、えさプロ
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:小荒井晃、住吉正、大段秀記、服部育男、佐藤健次、加藤直樹、鈴木知之