さとうきび梢頭部のサイレージは泌乳牛用飼料として利用できる
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要約
さとうきび梢頭部サイレージの発酵品質は良好であり、TDNは輸入エン麦乾草と同程度である。これを泌乳牛用飼料として用いる場合、給与飼料中の25%(乾物ベース)まで混合しても牛の肝機能、乳量および乳成分への影響は見られない。
- キーワード:さとうきび梢頭部、サイレージ、乳牛
- 担当:九州沖縄農研・イネ発酵TMR研究チーム、暖地温暖化研究チーム、バイオマス・資源作物開発チーム、機能性利用研究チーム
- 連絡先:電話 096-242-7748、電子メール suzukito@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・畜産草地・大家畜、畜産草地・飼料利用
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
日本のさとうきびは12-4月の期間に収穫され、収穫時に廃棄される梢頭部の一部は牛の飼料として利用されている。しかし、収穫期間が限られているため、給与期間も冬期に限定されている。この梢頭部をサイレージとして貯蔵できれば梢頭部を通年にわたって給与することができ、梢頭部の有効利用が可能である。そこで、さとうきび梢頭部をサイレージ調製し、その品質を評価し、これを泌乳牛に給与する場合の有効性を検討する。
成果の内容・特徴
- さとうきび梢頭部を細断後、パウチサイロに封入し3ヵ月経過した梢頭部サイレージは低pH、高乳酸含量でV-スコアも良好であり、発酵品質は優れている。また、ドラム缶サイロで調製された梢頭部サイレージのNDF含量は一般的な粗飼料に比べて高く、CPおよびTDN含量は輸入エン麦乾草と同程度である(表1)。
- 給与飼料(TDN73.0%, CP15.5%, それぞれ乾物あたり)中の30%(乾物ベース)を梢頭部サイレージとし、これを4頭の泌乳牛に2週間給与したときの給与期間前と給与期間直後の肝機能に影響は見られない(表2)。
- TMR中のイネ科乾草(乾物ベースで25%)を梢頭部サイレージに置き換え、泌乳牛4頭に給与した場合、梢頭部TMR給与時の方がNDF消化率は低いが、乳量および乳質に差は見られない(表3)。
成果の活用面・留意点
- 輸入エン麦乾草と同等の飼料成分をもった粗飼料を泌乳牛に給与している場合、これを梢頭部サイレージに置き換えることにより粗飼料自給率を向上させることができる。
- 給与飼料中30%(乾物ベース)を梢頭部サイレージとした場合、乳量が低下する個体も見られるため、泌乳牛への給与量の上限は25%までとする。
- 切り落とし直後の梢頭部は水分含量が高いため、サイレージ調製前に数日間、畑で乾物含量40%程度まで予乾し、発酵品質と選択採食の防止のために細断後サイレージ調製する必要がある。
- 本試験では種子島で収穫された日本の主要品種であるNiF8のさとうきび梢頭部を用いた。
具体的データ
その他
- 研究課題名:暖地・南西諸島の農業を支えるさとうきび等資源作物の低コスト安定生産技術の開発
- 課題ID:211-g
- 予算区分:地域総合「さとうきび」
- 研究期間:2002~2006年度
- 研究担当者:鈴木知之、神谷裕子、神谷 充、田中正仁、服部育男、佐藤健次、寺島義文、氏原邦博、杉本明
- 発表論文等:神谷ら(2005) 九州農業研究 67:90.
服部ら(2004) 九州農業研究 66:139.