感受性-抵抗性カンショ1年交互作はネコブセンチュウを低密度に抑制できる
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要約
圃場に生息するサツマイモネコブセンチュウのほとんどが、九州中部以北で優占するレースSP1である場合、感受性生食用品種と抵抗性有色品種を1年毎に作付けする交互作を行うことにより、殺線虫剤を用いることなく線虫を低密度に抑制できる。
- キーワード:ネコブセンチュウ、レース、カンショ、環境保全型農業、線虫密度低減
- 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
- 連絡先:電話096-242-7734、電子メールiwahori@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
サツマイモネコブセンチュウ(以下、線虫と記す)は生食用カンショ生産の大きな阻害要因であり、防除は殺線虫剤に依存しているのが現状である。一方、有色カンショは健康機能性が高く評価され、基幹畑作物として栽培の振興が図られており、線虫に対して抵抗性を持つものが少なくない。そこで、感受性の生食用カンショ品種と抵抗性有色カンショ品種を交互にに作付けすることによって、線虫を環境保全的かつ安定的に低密度で維持する作付体系を開発する。その際、経済性の観点から、なるべく生食用カンショ作付年数の多い体系を検討する。
成果の内容・特徴
- 1年目抵抗性-2年目感受性カンショ交互作体系では、線虫密度は1年目に極めて低く抑えられるため、2年目の感受性品種作付によっても生育期まで低く推移し、収穫時においても感受性品種連作区に比して低い(表1)。
- 同体系の2年目の感受性品種区では、薬剤処理区には劣るものの、感受性品種連作区に比して収量が増加し、可販率(=品質)は向上する(表2)。
- 1年目感受性-2年目抵抗性カンショ交互作体系では、線虫密度は1年目に極めて高くなるものの、2年目の抵抗性品種作付によって速やかに低下する(表1)。
- 初期線虫密度が低くとも、感受性品種連作2年目の収穫時には線虫による被害が顕在化する(表1)。従って、抵抗性カンショ作付の線虫密度低減効果は1年であり、感受性-抵抗性カンショの1年交互作体系が、被害をあまり生じさせない線虫密度に維持するために推奨される。
成果の活用面・留意点
- 殺線虫剤を連用した場合に比して劣るものの、殺線虫剤を用いることなく線虫密度を低く維持し、被害をあまり生じさせずカンショを生産することができる。
- 圃場の初期線虫密度が高い場合には1年目に抵抗性品種を作付けする。
- レースSP1に対してのみ抵抗性であればよいことから、選択できる抵抗性品種が多い。
- 圃場内に異なるレースが混在している場合があり、将来的に被害を生ずるようになる可能性がある。
- 作付前の圃場線虫レース検定が不可欠であり、検定には2~3ヵ月程度の時間を要する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
- 課題ID:214-h
- 予算区分:委託プロ(ブラニチ4系)
- 研究期間:2003~2005年度
- 研究担当者:岩堀英晶、立石 靖、上杉謙太、佐野善一