クリンカアッシュの施用は重粘土壌ジャーガルの物理性を改良する

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要約

ジャーガル(重粘土壌)に対するクリンカアッシュ(石炭灰の粗粒部分)の施用は、同量の川砂施用より大きな土壌物理性改良効果をもたらし、ニンジンを増収させる。施用により作物体中の重金属含量は増大しない。クリンカアッシュに含まれる塩分が多い場合は除塩する必要がある。

  • キーワード:クリンカアッシュ、ジャーガル、土壌物理性、硬化強度、有効水分量
  • 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-7764、電子メールkubotera@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

沖縄本島南部などに分布するジャーガルは重粘な陸成未熟土で、乾燥時に強く硬化し湿潤時には強く粘着するなど土壌物理性に問題がある。本研究では沖縄県内で安価に入手できる粗粒質資材のクリンカアッシュ(火力発電所などで産生される石炭灰の粗粒部分で砂に似た形状。多孔質のため大きい物理性改良効果が期待できる)に着目し、その施用がジャーガルの土壌物理性を改良する効果と、作物中の重金属含量など品質への影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • クリンカアッシュの粒径組成は6割が粗砂、2割が細~小礫、2割が細砂以下であり、その施用によりジャーガルの有効水分量の増大、乾燥に伴う土壌収縮と硬化の緩和、固相率と容積重の減少、透水性の増大といった土壌の物理性改良効果が得られる。その効果は同量の川砂(9割が粗砂)よりも大きく、重量比で10%(作土深20cm、土壌の仮比重1.2として240 t ha-1)の施用により有効水分量は対照にくらべ35%増大、乾燥時の硬化強度は29%減少する(図1)。
  • 供試したクリンカアッシュは産生過程で海水と接触するため塩分を含むので、灌水による除塩を行わないと土壌のECを著しく増大させる。レタスのポット試験では、クリンカアッシュを施用し植付前に除塩した場合は収量への影響が少ないが、除塩を行わない場合は収量が大きく減少する(図2)。
  • 作物種ごとに見ると、クリンカアッシュの10%施用によりレタス、インゲン、チンゲンサイでは増収は見られないがニンジンは6割の増収が見られる(表1)。
  • クリンカアッシュの元素組成はジャーガルと似ており、多量に施用した場合でも作物体中の重金属など無機元素含量は増加しない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • アルカリ性土壌であるジャーガルで得られた結果である。
  • 土壌物理性の改良に関しては、ジャーガル以外の重粘土壌でも本試験と同様の効果が期待できる。
  • クリンカアッシュの施用に当たっては、資材の塩分をEC測定でチェックし、塩分濃度が高い場合は施用前または植付前に雨水や灌水で除塩する必要がある。

具体的データ

図1 資材の施用がジャーガルの土壌物理性に及ぼす影響

図2 資材の施用が土壌のECとレタスの収量に及ぼす影響(1/5000a ポットでの栽培試験)

表1 クリンカアッシュの10%施用が各作物の収穫物収量に及ぼす影響

表2 ジャーガル、クリンカアッシュ、レタス作物体中の無機成分含量

その他

  • 研究課題名:有機質資材多投入地域における合理的な資材施用のための土壌環境指標及び土壌管理技術の開発
  • 課題ID:214-q.2
  • 予算区分:沖縄広域連携
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:久保寺秀夫
  • 発表論文等:1)久保寺(2006) 土肥誌 77(5):541-548