発酵温度を70°Cまで上げる適切な堆肥化により堆肥の大腸菌は未検出となる

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要約

堆肥や堆肥投入土壌中の常在菌の中から大腸菌を特異的に検出する方法を用いて、家畜ふんに接種した大腸菌の動態を調査したところ、発酵温度を70°Cまで上げる適切な堆肥化により、堆肥の大腸菌は未検出となる。

  • キーワード:有機物、堆肥化、特異的検出法、大腸菌、生物的安全性
  • 担当:九州沖縄農研・土壌環境指標研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-7765、電子メールhasimoto@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

これまで営農現場等では、主に土壌の理化学性や作物生育への影響、雑草対策等の知見から堆肥完熟化の必要性が指導されているが、生物性については充分な科学的知見がないままである。そこで、多数の常在菌の中から目的の菌を分画し、検出するDVC-FISH(Direct viable count - Fluorescence in situ hybridization)法(染谷2006)を用いて、堆肥化過程の大腸菌の動態を調査することで、完熟堆肥の生物的安全性が高いことを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 堆肥や土壌中から目的とする微生物を特異的に検出するためのDVC-FISH法は次のとおり。すなわち、試料の100倍希釈懸濁液に少量の栄養基質と細胞分裂阻害剤を添加し、30℃で24時間培養すると、生きている細菌は栄養を吸収して大きく肥大伸張する。この試料をFISH法にかけると、特異プローブに反応した目的菌だけが染色されるので、肥大伸張し、染色された細胞を生菌と判断する(図1)。
  • 堆肥原料(牛ふん)に大腸菌を接種し、水分量を約60%とし、毎週1回切り返し作業を行う堆肥化過程、あるいは野積み状態の大腸菌数の推移を調査すると、適切な堆肥化により発酵温度は70℃まで上がり(図2)、大腸菌数も2週間後には検出限界以下となる(表1)。
  • 野積み等不適切な堆肥化過程で製造された資材中には、培養法では検出できなくても大腸菌が生き残っている場合がある(表1)。

成果の活用面・留意点

  • DVC-FISH法は大腸菌以外の細菌の特異的検出にも適用可能である。

具体的データ

図1 DVC-FISH法による牛ふん中の大腸菌の検出

図2 強制通風発酵装置を利用した堆肥化過程の温度変化

表1 大腸菌を接種した牛ふんを堆肥化した場合と野積みした場合の大腸菌数の変化

その他

  • 研究課題名:有機質資材多投入地帯における合理的な資材施用のための土壌環境指標及び土壌管理技術の開発
  • 課題ID:214-q.2
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:橋本知義、嶋谷智佳子、染谷孝(佐賀大)、Gong Chun-Ming(佐賀大)、Wu Shengjin(佐賀大)、
                      松浦敬(佐賀大)、古賀智大(佐賀大)、横山明敏(宮崎県総農試)、川崎佳栄(宮崎県総農試)、
                      西原基樹(宮崎県総農試)