乾土状態でのスクミリンゴガイの生存期間
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要約
乾土状態でのスクミリンゴガイの生存期間を実験的に調べた結果、生存率には貝のサイズや潜土の有無が影響し、完全な乾燥状態では大貝の一部が最長11ヶ月、湿潤状態では中・大貝のごく一部が29ヶ月以上生存し、休眠状態で3年近く生存する能力がある。
- キーワード:スクミリンゴガイ、田畑輪換、生存期間
- 担当:九州沖縄農研・水田輪作研究チーム
- 連絡先:電話096-242-7732、電子メールtwada@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・水田作
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
スクミリンゴガイが生息する水田では、近年、しばしば転作のため大豆などの畑作物が栽培される。畑地(乾土)状態で休眠中の貝の生存能力はこれまで全く調べられてこなかった。そこで、休眠状態での貝の生存率や畑地状態での貝絶滅に至る期間の目安を知るため、乾土状態での貝の生存率を実験的に調べた。
成果の内容・特徴
- 1/5000aのワグネルポットに十分な土と表面水を入れ貝を潜土させた後(一部の貝は潜土しなかった),乾土状態にして長期間放置(20~27℃)して定期的に貝の生存率を貝の大きさ別に調査した。乾土状態の試験区として,水を全く供与しない乾燥区と,月に2~3回,土が十分湿る程度に水を供与する湿潤区を設け,生存率に及ぼす土壌水分の影響を調べた。データ解析は生存率を従属変数として,一般化線形モデル(GLM)を用いた。
- 貝の大小は有意に生存率に影響し、大貝(殻高30±3mm)と中貝(15±2mm)は小貝(8±1mm)に較べて生存率が高い(図1,表1)。完全な乾燥状態でも大貝は最長11ヶ月生存し、湿潤状態で大貝、中貝の一部(それぞれ、4%と3.3%;潜土した貝のみをみると13%と3.6%)は29ヶ月以上生存する。一方、小貝は今回設定した湿潤状態では最長11ヶ月しか生存しない(図1、図2)。
- 貝の潜土の有無も有意に生存率に影響し、潜土した貝の生存率が高い(図2、表1)。
- 水の供与の有無(乾燥又は湿潤)は主効果としては有意差がなかったが(p=0.07)、貝のサイズや放置期間との交互作用項が有意であり、これらの要因を通して貝の生存率に影響を与えている(表1)。
- 以上の結果から、畑地状態での貝の生存には様々な要因が影響するが、貝を絶滅させるには、少なくとも3年程度畑作を継続させる必要があると考えられる。
成果の活用面・留意点
- 畑作条件下の貝の生存に及ぼす環境要因の影響や生存率の目安となる。
- 畑作期間中の貝の生存には上記の要因の他,耕耘による破砕や冬季の寒さなども影響する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
- 課題ID:211-k
- 予算区分:交付金・基盤
- 研究期間:2002~2006年度
- 研究担当者:和田 節、遊佐陽一、高橋 智(奈良女子大)
- 発表論文等:Yusa, Y. Wada T. & Takahashi S. (2006) Appl. Entomol. Zool. 41:627-632.