カンショ茎葉乾燥粉末給与は暑熱による豚肉中脂質過酸化物の増加を緩和する

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要約

環境温度23℃に比べて32℃で肥育した豚では、豚肉の保水性などの肉質を低下させる脂質過酸化物が増加する。環境温度32℃で肥育する豚でもカンショ茎葉乾燥粉末を5%添加した飼料を給与することにより、豚肉中脂質過酸化物の増加は緩和される。

  • キーワード:暑熱環境、豚肉、脂質過酸化物、サツマイモ、ポリフェノール
  • 担当:九州沖縄農研・九州バイオマス利用研究チーム、暖地温暖化研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-7749、電子メールmura@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地、共通基盤・バイオマス研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

サツマイモ(カンショ)はアントシアニン系色素などのポリフェノール類を含み、それらの成分は抗酸化などの機能性を示す。しかし、機能性成分を多く含くむ茎葉などの地上部は食用に供されず緑肥として畑地に還元されている。このため、地上部の機能性成分が有する生理活性をうまく活用しているとはいえない。
そこで、カンショ茎葉を肥育豚の飼料原料として利用し、機能性成分の抗酸化活性を豚生体内で発現させて、豚肉の品質向上を図ることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 環境温度23℃の常温(適温)環境と32℃の暑熱環境下で、採食量が同じになるようにして肥育豚を5週間飼育すると、暑熱環境下で飼育する豚より生産される胸最長筋(ロース)中の脂質過酸化物含量は増加する(P<0.01、図1)。
  • 暑熱環境(温度32℃、湿度約60%)下の肥育豚に対して、60℃で通風乾燥したカンショ茎葉(系統:95K1)粉末を5%添加した飼料を8週間給与すると、肥育中、とくに、肥育前期(3週間)の採食量は増加して、成長を促進する傾向を示す(表1)。
  • 用いた茎葉乾燥粉末は総ポリフェノールと総アントシアニンをそれぞれ28.8mg/g風乾物(クロロゲン酸当量)と325μg/g(シアニジン3-グルコシド当量)含み、抗酸化能を表すDPPH活性は26.7μmol/g(トロロックス当量)である。
  • 暑熱環境下では、カンショ茎葉粉末を添加給与する豚より生産される胸最長筋中の脂質過酸化物含量は低下する(P<0.05、図2)。

成果の活用面・留意点

  • これまで主に緑肥として利用されてきたカンショ茎葉の養豚用飼料原料としての利用促進が期待できる。
  • 豚の飼養成績に負の影響を及ぼすことはなく、九州地域の夏季などのような暑熱環境下で生産される豚肉の酸化による肉質の低下を予防できる。本成果で用いた茎葉は抗酸化能の比較的低い品種と考えられ、多くの品種の茎葉で予防効果が期待できる。
  • カンショ茎葉を飼料として利用する場合、農薬の茎葉への残留等による畜産物への移行防止の観点から、栽培時に使用する農薬の種類や使用回数等に注意が必要である。

具体的データ

図1 暑熱環境下で飼育した豚により生産される豚肉中の脂質過酸化物量(n=18)

表1 カンショ茎葉粉末給与が暑熱環境下で肥育する豚の飼養成績に及ぼす影響(n=10)

図2 暑熱環境下の豚にカンショ茎葉粉末5 % 添加給与すること

その他

  • 研究課題名:暖地における畑作物加工残渣等地域バイオマスのカスケード利用・地域循環システムの開発
  • 課題ID:411-d
  • 予算区分:形態・生理
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:村上斉、松本光史、梶雄次