2005、06年に日本に飛来したウンカ類は一部薬剤に対して感受性低下が見られる

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要約

2005、06年に日本に飛来したトビイロウンカのイミダクロプリドに対するLD50値(50%致死量)は2001年に比べ、また2006年に飛来したセジロウンカに対するフィプロニルのLD50値は2005年に比べ、それぞれ大幅に増加し、薬剤感受性の低下が認められる。

  • キーワード:トビイロウンカ、セジロウンカ、殺虫剤抵抗性、微量局所施用法
  • 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-7731、電子メールmmasa@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫、共通基盤(病害虫)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

2005、2006年は九州を中心にトビイロウンカの多飛来・多発生が見られた。この多発生は日本のみならず中国などでも同時的に起こっている。また、タイなどの東南アジア地域では2003年頃からトビイロウンカに対する一部の薬剤の感受性低下が報告されている。これらのことから、多発生の一因として、飛来したウンカの薬剤感受性の低下が懸念されるが、日本では2001年以降、薬剤感受性のモニタリングは行われていない。そこで、 2005年(熊本)と2006年(鹿児島)の7月に飛来したトビイロウンカとセジロウンカの薬剤感受性を微量局所施用法によって検定する。

成果の内容・特徴

  • トビイロウンカに対するイミダクロプリドでは、2001年まではLD50値は0.1前後であったが(Nagata et al.、2001)、2005年には0.8と約8倍に、2006年には7.7と2005年に比べて約9倍に増加したことから、薬剤感受性の低下が認められる(表1)。
  • セジロウンカに対するフィプロニルについては、2005年以前の比較データはないが、2005年にはLD50値が2.6、2006年には22.5と2005年の8倍以上に増加したことから、薬剤感受性の低下が認められる(表1、表2)。
  • トビイロウンカに対するフィプロニルとセジロウンカに対するイミダクロプリドでは、LD50値は0.3以下と低い値であり、薬剤感受性の変化は認められない(表1)。
  • 薬量・死虫率プロビット回帰直線の傾きは、トビイロウンカに対するイミダクロプリド、セジロウンカに対するフィプロニルではいずれも1前後の値で、他の薬剤に比べて緩やかである(表1)。このことは、薬量の増減による死虫率の増減の変化が少ないことを意味している。
  • セジロウンカに対するフィプロニルについては、48、72時間後のLD50値は24時間後に比べて顕著に低下したことから(表2)、本薬剤は処理24時間後では効果の発現が十分でない。
  • 1999~2001年のLD50値(Nagata et al.、2001)と比較した場合の2005~2006年の両ウンカのLD50値の変化の幅は、イミダクロプリドとフィプロニル以外の薬剤では4倍以内と小さく、薬剤感受性の変化は認められない(表1)。また、2005年以前の比較データがないジノテフランとチアメトキサムについても、LD50値は0.3以下と低い値である。

成果の活用面・留意点

  • イネウンカ類防除対策および防除体系策定の際の薬剤選定に参考となる。
  • 新規殺虫剤開発の際の参考となる。
  • 2006年のセジロウンカ個体群に対するフィプロニルのLD50値は、累代2世代目と3世代目で大きく異なるが(表2)、これは薬量・死虫率プロビット回帰直線の傾きが非常に緩やかなため、LD50値の推定誤差が大きいことによる。

具体的データ

表1.移動性イネウンカ類に対する各種薬剤の処理24時間後のLD50値(50%致死量:μg/g)

表2.処理後時間とLD50値(μg/g)との関係

その他

  • 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明
  • 課題ID:214-h
  • 予算区分:基盤的研究
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:松村正哉、竹内博昭、佐藤 雅