ダイズ品種「Bay」はハスモンヨトウ幼虫の加害により抵抗性が誘導される

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要約

ダイズ品種「Bay」は、ハスモンヨトウの幼虫期における発育遅延や死亡率増加をもたらす。「Bay」の抵抗性は既存の抵抗性品種とは異なりハスモンヨトウ幼虫の加害により誘導されている。

  • キーワード:誘導抵抗性、ダイズ、ハスモンヨトウ
  • 担当:九州沖縄農研・難防除害虫研究チーム
  • 連絡先:電話096-242-7732、電子メールenobu@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

これまでハスモンヨトウに対するダイズの抵抗性品種としては「ヒメシラズ」など収量・品質等の農業特性が劣る数品種が報告されているのみである。米国ダイズ品種「Bay」は抵抗性品種として育成されたものではないが、ハスモンヨトウによる被害が少ないとされる。そこで、「Bay」と抵抗性の「ヒメシラズ」および感受性の「フクユタカ」の3品種上でのハスモンヨトウ幼虫の成長と生存率を比較し、「Bay」の抵抗性程度を検証する。また、「Bay」の抵抗性がハスモンヨトウ幼虫の加害によって誘導されている可能性を検証する。

成果の内容・特徴

  • 終齢(6齢)幼虫をダイズ株上に放飼した試験において、「Bay」は「ヒメシラズ」と同様な生体重変動を示し(図1)、「Bay」上の個体は感受性品種「フクユタカ」に比べ有意に幼虫期間が長く蛹重も軽い(表1)。さらに「Bay」および「ヒメシラズ」上では「フクユタカ」に比べ蛹化率が極端に低く(表1)、ほとんどの幼虫が蛹になれず死亡する。
  • 「Bay」では加害を受けた植物体から切り取った葉を与えた場合、無傷の葉を与えた幼虫(100%)に比べ、摂食量(78.2%)や体重増加量(67.3%)が有意に減少し(表2)、抵抗性の誘導が認められた。
  • 「ヒメシラズ」では幼虫の加害による摂食量と体重増加量への影響は認められないが、無傷の植物体の葉を与えた場合でも「フクユタカ」の半分程度の摂食量と3割程度の体重増加量しかなく(表2)、恒常的な抵抗性を有する。
  • 以上から、ダイズ品種「Bay」は「ヒメシラズ」と同様にハスモンヨトウ幼虫に対し抵抗性を示すが、そのメカニズムは恒常的に抵抗性を示す「ヒメシラズ」とは異なり、ハスモンヨトウ幼虫の加害により誘導される。

成果の活用面・留意点

  • 「Bay」はこれまで明らかになっている抵抗性品種に比べ品質等の農業特性が優れることから、減農薬栽培あるいは抵抗性品種育成の素材としての利用が考えられる。

具体的データ

図1.ハスモンヨトウ終齢幼虫放飼後の各ダイズ品種上での幼虫生体重推移(バーはSE)

表1.各ダイズ品種上でのハスモンヨトウ終齢幼虫の発育(平均±SE)

表2.幼虫によるダイズ植物体加害の有無がその後の終齢幼虫の摂食および発育に与える影響(平均±SE)

その他

  • 研究課題名:暖地における長距離移動性、新規発生等難防除害虫の発生メカニズムの解明と総合防除技術の開発
  • 課題ID:214-h
  • 予算区分:基盤的研究、生物機能、交付金
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:遠藤信幸、和田 節、藤條純夫(佐賀大)
  • 発表論文等:1)遠藤ら (2005) 九病虫研会報 51:49-52.